HONZの元となった本のキュレーター勉強会が立ち上がる少し前、われわれ「キュレーター見習い」のあずかり知らぬところで、成毛眞と書評家の東えりかが密会(?)した(らしい)。そのときに二人の間でおもしろかった、と意見が一致して大いに盛り上がった一冊の本がある。それがこちら、である。
装丁も最高にいいし、内容は文句なく面白い。成毛のレビューには、2009年の「強力お勧め本」とある。
というわけで、記念すべきHONZ著者インタビュー第一回は、やはりこの人だろう、ということになったわけだ。
著者の塚本康浩先生は、獣医学博士であり、40歳代前半にしてすでに京都府立大学大学院生命環境科学研究科応用生命科学専攻の教授。2009年の産学官連携功労者表彰では「文部科学大臣賞」も受賞している、超キレ者研究者。……のはずであるが、すでに『ダチョウ力』をお読みになった方はご存知のように、すこぶるヘンなお方である。
私の取材依頼への塚本先生からの返事の件名は、「ダチョウの塚本です。」とだけある。そして頼みもしないのに、嬉しそうにダチョウに囲まれた写真まで添付してあった。
↓そのときの塚本先生の写真
それで、私も(もちろん、件名「Re:ダチョウの塚本です」で)返信し、まあ、そのあといろいろやり取りして、本にも登場する神戸のダチョウ牧場「オーストリッチ神戸」にうかがったのである。
ダチョウは声が出ない。だから牧場にはダチョウがたくさんいるにも拘らず、シーンとしていて、時折ダチョウが口をパクパクさせる音が響くのみ。塚本先生が本に書いていたが、確かにここは癒される。その静けさのなかで、奇妙な動きを見せるダチョウたちを見ていると、いつまでもここにいたい気持ちになるのだ。
土屋 「いいですね~、ここ」
塚本 「いいでしょ~」
土屋 「……」
塚本 「……」
ダチョウ 「パクパク」
(二人で存分に静けさを楽しんだあと)
土屋 「ダチョウっていいですね~」
塚本 「いいでしょ~」
土屋 「帰りたくないなぁ……」
塚本 「……」
いい年した男が二人、ダチョウを愛でながら30分ほどほとんど無言で過ごす。いやインタビューしなきゃいけないんですけど。
そこに塚本先生の研究室にいる足立くんが登場。『ダチョウ力』を読んだ方なら、ここで歓声が上がるはず。成毛もレビューでわざわざ「弟子の足立君もいい味出している」と書いている。私も思わず「ファンなんです」と握手を求めてしまった。
土屋「足立くんは相変わらずなんですか」
塚本「はい、相変わらず、独身、彼女なし、実家通いです。でもダチョウのメスにはめっちゃモテます。彼は日本で2番目にダチョウの扱いが巧いんですよ」
土屋「一番は塚本先生なんですか?」
塚本「いや、岐阜にいる日系ブラジル人です。だから日本人では足立くんが一番ですね。でもね、足立くん、消えてくれないかな、と思っているんです」
土屋「えっ?」
塚本「彼はダチョウの扱いも、私の研究のノウハウも、すべて知っていますからね。どこかに引きぬかれたら実に困ります。交通事故とかでそのまま消えてしまえば……」
土屋「ははは」
塚本「……」(遠い目&真顔)
と危険な会話を交わしたあと、塚本先生、足立くんと場所をさらに奥に移動、そこで塚本先生が言う。
「走らせましょうか?」
それを合図に足立くんがダチョウの群れを追い立ててゆく。そしてダチョウの群れが見えなくなったと思うと、坂の上から……。
すごい迫力で目の前をダチョウが通りすぎてゆく。ものすごく楽しい。調子にのって3回ダチョウに走ってもらったら、さすがに二人ともイラついてきた模様(特に足立くん)。
さらに足立くんには、塚本先生から、ダチョウに乗って走れ、というミッションが課せられる。
ということで、今回はここまで。って、全然インタビューになっていませんが、それは、次回アップまでに是非とも『ダチョウ力』を読んでいただきたいからであります。次回、塚本節爆発のインタビューに突入します。本の内容のウラ話などもありますので、事前に本を読んでおくと、何倍も楽しめますよ。
著者インタビュー 『ダチョウ力』 塚本康浩氏(その2)はこちら