昨年、地元の駅が改装されて、その中に成城石井ができた。それからというもの輸入菓子や、ワインなどをよくそこで購入するようになった。輸入菓子はちょっと高いけれども、成城石井じゃないと売ってないものも多くとても重宝している。
ワインを買うときはつまみになるチーズやオリーブも一緒に買いたいとおもっているのだけど、あまりに種類が多すぎて、いつもどれを買ったらいいのかわからずに、購入をあきらめている。それにしても、なんでオリーブだけでこんなにたくさんの種類を置いているのだろう?と思っていたら、この本に答えが載っていた。
買い物というのは、選ぶ楽しみがあるわけですよね。それを店の中に必ず残しておきたいと思っているんです。
これは成城石井の社長である原昭彦氏の言葉だ。成城石井では顧客が自分のタイプに合わせて、商品を選べる売場をつくるという意思を持っているのだという。顧客の趣味嗜好は様々であるから、そこには正解がない。それならばどれを選んでもらっても、常に高いクオリティのものがあるというのが大事だと考えているのだという。
これはものすごく非効率なことだとおもうのだが、成城石井では効率というものをあまり重視していない。もちろん無駄な部分は徹底的に削っているが、「お客様のために」なることであれば、そこに効率は求めない。そんな企業の姿勢がこの本からは見えてくる。この効率を求めないというのはこれからの時代、重要なキーワードになってくるのではないか?と私は思っている。
そもそも成城石井は儲けようと思って商売をはじめたわけではない。本当においしいもの、こだわったものをとことん突き詰めよう、というところから品揃えを考えた。するとそれが結果として他者が真似できない仕組みや、品揃えにつながったのだという。成功する企業によくあることだけど、お客様のためを突き詰めていったら、結果として成功した。そんな素晴らしい企業の形がここにはある。
また成城石井という会社の素晴らしさもこの本を読むと見えてくる。現場主義、現場が主役という姿勢を全社で徹底しているというのだ。現場主義という言葉はいろんな企業が口にしているし、正直なところ口だけだと思うところも多い。しかし成城石井はまったく違う。これほど現場主義を徹底している企業を私は知らない。
まず驚いたのが、繁忙期には本部の従業員も当たり前のように店頭に立つということだ。バイヤーが偉い、本部が偉いということは決してないということを体現していて、たとえばバレンタインデーの時期だったら、お菓子のバイヤーが本部にいることは絶対にないという。間違いなく現場のサポートに出ているというのだ。こういったことはなかなかできるものではない。
さらに驚いたのは、つい最近まで社長の原昭彦氏もエプロンをして応援で現場に行くことも珍しくはなかったという話だ。最近はさすがに社長業が忙しくて、店にはあまりでることができなくなったそうだが、若い従業員にまじって、品出しをしたり、レジカゴを整理したり、接客をする社長。なんて素敵なんだろうか?そういったことがあれば現場の指揮も高まるに違いない。
成城石井で買い物をしたことがある人は、きっとこの本を楽しめるだろう。成城石井のなにがすごいのか?ということがよく分かるはずだ。私はこの本を読み終えたあと、つい成城石井で買い物をしてしまった。ちょっと高いけども、成城石井にあるものなら間違いない!そんな信頼を覚えたからだ。また小売業で働いている人にとっては、働き方において参考になる話がとてもたくさん出てくるので特にオススメしたい。
最後は社長の原昭彦氏の言葉でレビューを締めたいと思う。
「商売ってそんなに難しいものではないと思っているんです。やらなければいけないことを、徹底するだけ。特に基本を徹底するだけ。難しいとすれば、それを継続することだけだと思っています。本当に当たり前すぎて、みんなやらないんです。当たり前のことをやり続けることが、一番大事なんです。」
当たり前のことをやる続けること、それが一番大事。