「あけましておめでとう!」という会話が飛びかっていた沖縄である。今頃正月か? 旧暦がいまだに生活暦として通用している土地柄ゆえに? いえいえ、ながーい「梅雨」があけた喜びをみんなで分かち合っていたのでした。本格的な、ながーい夏の到来である。
さて夏!といえば、「怖い話」だ。ここ数年、沖縄県産本版元・我がボーダーインクでは、『琉球怪談』なる怪談実話シリーズを刊行している。怖い・不思議な体験談には事欠かない土地柄であるが、本格的な実話怪談本がなかったこともあり、たくさんの読者に喜ばれた。しかし今回の「怖い話」はまたひと味違う。琉球の歴史の中であまり知られていない、怖くてあやしい話のオンパレードなのである。
著者の上里隆史さんは、当社の『目からウロコの琉球・沖縄史』シリーズをはじめとして、琉球・沖縄史に関する著作をここ数年勢力的に出版してきた歴史研究家で、琉球史ファンにはよく知られた存在である。
上里さんが〈昨今の歴史研究で常識になっている事実だが一般的にはほとんど知られていない〉おもしろい史実を、広く一般の人に伝えるために始めた琉球歴史ブログ「目からウロコの琉球・沖縄史」があまりにおもしろくて、その時点ではどこの誰か、まったく素性を知らなかったのだけど(ブロガーネーム・とらひこ)、「ぜひ本にしましょう!」と、僕がメールしたのが、2006年のことだ。
まだ30代に突入したばかりの若き歴史研究家であった彼は、琉球・沖縄史のトリビア的な史実を、コラムとしてじつにうまく紹介していた。まさに「目からウロコ」な内容なのである(ベタといえばベタなのだが、ほんとにそうなのだからしかたない)。
「琉球の人はむかしターバンを巻いていた!」
「沖縄移住ブームは五百年前からあった!」
「働かないニート君は島流しにされた」
「首里城から王様のウンコ発見!?」
「グスクにある〈太陽の穴〉とは」などなど。
琉球史をしらなければあまりピンとこないネタだろうか。いやいや、琉球王国はご存じのとおり、日本・中国を含む東アジア海域の歴史としてとらえると、歴史ファンなら無視は出来ない存在なのである。その興味深い入り口として上里さんの『目からウロコ…』シリーズは、読みやすさ、内容の確かさと意外性、と、まさに最適なのである。
今回の『あやしい! 目からウロコの琉球・沖縄史』は、ボーダーインクのここ数年の怪談本の流れもふまえてもらって、前書きからとばしてます。
歴史には光もあれば、また影もある。
今回は琉球・沖縄史の「影」の話を前面に出してご紹介します。
最初にことわっておきますが、本書の《あやしい話》は読んだ後にさわやかな気分にはなれません。これまでの「目からウロコ」シリーズをイメージされている方、よい子のみなさん、「輝かしく立派な琉球の歴史」を求めている方は静かに本を閉じ、書店の棚に戻してください。隣に並んでいる普通の沖縄歴史本をおススメします。要するに本書は閲覧注意!なのです。怖くて、アヤシイ話のオンパレードです。たとえば…
久高島に「異種の民」がいた!?
琉球に死刑と拷問があった!?
沖縄で謎の「ピラミッド」が発見された!?
琉球館で数十体の首なし人骨が発見された!?
他にも、「首里城に琉球版バベルの塔があった?!」「琉球にミイラの風習があった?」「琉球の弁財天は異形の姿をしていた!」「江戸で、琉球イケメンズのブームがあった」などなど、面白いコラムの数々。著者の手によるイラストもいい味だしてます(ジャケットの人物イラストも著者による)。
そして今回の目玉企画として、上里さんが、池上永一原作・NHKドラマ「テンペスト」の時代考証をしたときの裏話をこっそり打ち明けています。
今年沖縄に遊びに来るのなら、本書シリーズを歴史ガイドとして活用すれば、ひと味違う旅行ができること請け合いです。〈琉球海溝のような沖縄の歴史の深さ、イノー(沖縄サンゴ礁の内海)のような豊穣さ〉にぜひ触れてみてください。