とうとう消費税が上がりましたね!増税前には買いだめに走り、増税後はできるだけ買い物を控えよう…と、3月末ごろは「本当に欲しいものは何か?」「欲しいものは無かったかなぁ?」とずっとモノに思いをめぐらせていました。そんな中で出会った、モノにまつわる本をご紹介します。
「最小限しか持たずに最大限に豊かな暮らしをするための21世紀の幸福論」と謳われたこの本。
著者であるジョシュア・フィールズ・ミルバーンとライアン・ニコデマスの30歳男性2人組、ザ・ミニマリスツ(The Minimalists)は、もっと少ない所有物でもっと意義深い生活を送ることを探求、実践するユニットです。彼らは、世に言う「勝ち組」。広い家、最新の暮らし、会社での昇進と高い年収を得て、誰もがうらやむ成功を一度はおさめましたが、時間や人間関係に追い立てられて、本当の豊かさとは何か?と考えるようになります。そして「ミニマリスト」として生きることを選択したのです。
彼らは持ち家を売却し、テレビを持たず、常設のインターネット回線を断ち、時計を周りから排除しています。「幸せはお金じゃ買えないんだよって事を、僕はお金持ちになって言ってみたい」というCMがありましたが、お金持ちになった二人組みがシンプルな生活に価値を見出し、「ミニマリズム」という生き方を提唱していることは、「ミニマリスト」の生活が多くの豊かなものを実行者に与えてくれるのだと、かなり説得力があります。
著者が30歳になって学んだ30のことを文中であげているので、最初の5個だけ紹介します。
「愛してこそ人間」「愛だけでは不十分」「幸福はどんな店にも売っていない」「成功とは客観的なもの」「変化をマスト事項として扱うことがマスト事項」
特に最後の「変化をマスト事項として扱う」というのがいいなぁと思うのです。変わったほうがいいこと、やったほうがいいこと、分かってはいるけどやれていないこと。それを「やらなければいけない!!」に速やかに変換していく。「したほうがいいことは、やらなければならないのだ!」そう決断すると日常がみるみる変わる気がします。
「ミニマリズムとは、単純に、生活の中から不必要なものをそぎ落として、本当に大切なものだけにフォーカスを当てること」
たくさんのことをしなくてもいいのです。本当に必要なエッセンスのようなものを大切に扱う。大切なものを埋没させない決意。速やかに本当に必要なものだけ手に入れること。
時に削ぎ落とすこと、あえて手に入れないことを、意識し決断する大切さを教えてくれる1冊です。
シェアする、ということに注目が集まっています。一番いまホットなのはシェアハウスかなぁと思います。働く場所のシェア「コワーキングスペース」というのもありますね。ただコストを抑えるだけでなく、分かち合うことによって絆がうまれたり、ビジネスがうまれたり、様々なメリットがあるという話しをよく聞くようになりました。
知識のシェアという点ではウィキペディア、作品のシェアということで「pixiv」「YouTube」などのサービスが一般的になってきました。私たちがより快適に簡単に様々なものをシェアするために、プラットフォーム作りに尽力している人たちが集った2012年のあるシンポジウムをまとめたのが本書です。
「シェア」とは結局のところ、何なのだろうか。本書で語られた「シェア」は、住まいや働き方の一つの様態であり、クリエイティビティを最大化する方法であり、あるいは一種の「新しい公共」を立ち上がらせるものであった。「シェア」という概念は、個人の生き方から、組織や社会のあり方に至るまで、広範なことがらに接続している。
「シェア」を通じて垣間見える未来の社会とは、人口の減少とともに余剰となったストックを、その時々の固有の状況に応じた最適な状態で維持し、絶え間なくマネジメントしていくために、人が自ら考え、行動し、かつ人々が、それぞれに固有の価値観に基づいて同意を形成する社会である。
いつか自分だけの土地や家を持ちたい、会社を作りたい、車が欲しい。所有することが目標であり、そのために懸命に働いてきた時代がありました。今は所有することより、あえて持たないことに注目が集まっている気がします。持たないことの一つの選択肢としての「シェア」ではありますが、それ以上の効果があることを本書は教えてくれます。
ものに縛られるのではなく、自分だけで持たないことによって、とらわれず、流動的で在るということの強みを得ることができるのが、読めば分かってきますし、現代において希薄になりつつある、生身の人と人とのふれあいが、シェアすることによりうまれて、温かい空間が出来上がる実例に心が癒されたりもします。分け合うことの豊かさ、可能性の広がりについて考えさせられる1冊です。
最後は思いっきり物欲をくすぐる、開くページどれもこれもモノモノしている1冊をご紹介。
旧共産主義諸国でつくられた「共産主婦」と名づけられた人形が、1日の生活をおくる様をストーリー仕立てで展開し、その過程で必要になってくる商品をひたすら紹介する本です。商品説明だけでなく、各国の現地事情についてもマニアックに突っ込んだ解説が入っており、東欧雑貨好き女子だけでなく、共産主義に興味がある方すべてがすごく楽しめる1冊になっています。
レトロで独特の味わいがある雑貨の写真に物欲を刺激されながら、当時の女性の生活に思いを馳せてみて下さい。インテリアやデザインのヒントが詰まっていますし、ただ眺めて楽しいだけでなく、いつの間にか社会主義国家の時代背景も学び取ることができます。可愛さの裏にノスタルジーを感じさせる、軽いようで味わい深く重みのある1冊です。
【大垣書店烏丸三条店】
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