ざっくりと内容のご紹介!
つい先日IPOも果たしてビジネス的にもそこそこ好調っぽいツイッター。
その始まりは、ほとんど失敗に終わって破綻しかけていた「オデオ」というITベンチャー企業でした。そこで、社員をクビにしまくったあと、残った人たちで考えたプロジェクトが「ツイッター」でした。
本書は、いまや3億ユーザが使う世界的ツールになった「ツイッター」の創業秘話を追ったものです。
編集し終わっての率直な感想は――
「フェイスブックだけじゃなくて、ツイッターの社内でもこんなにもドロドロな権力争いと裏切りが起きていたのか!?」
たんなる成功物語ではなく、「友情」と「嫉妬」に揺れ動き、「一人の女性を奪い合う」若者たちの姿はまるで青春ドラマを見ているかのようにハラハラ、ドキドキ、そして時にムカムカします。アメリカでテレビドラマ化が決定したのも納得。ストーリーとしておもしろいです。いまや世界中で使われているサービスも、本当に「普通の若者」が創り出したのだと実感させてくれます。
一方で、友だちを裏切ってまでも、「権力」と「金」と「名誉」がほしいもんなんだなあと、つくづく人間の強欲さを実感させられます(社内の権力闘争なんて、ベンチャーでも歴史ある会社でも存在するんですね)。
ツイッターの現会長でスクエア(モバイル端末を使ったクレジット決済会社)の創業者でもあるジャック・ドーシーさんが、自分のことを「次のスティーブ・ジョブズ」だとメディアに思わせるために、服装からしゃべり方、自宅の内装まで色んなことを真似していき、「ツイッターは俺が自分ひとりで創った!」と言いふらして、最後には「友だち」をみんな失くしていくくだりは、「うげぇ・・・こいつ最低」という気分にさせられます。(ここら辺の記述は前CEOのエブ・ウィリアムズさん側に寄っているので、ジャック・ドーシーさん側から見たストーリーも気になりますが)。
本書で出てくるつぎの文章は、ジャック・ドーシーさんとエブ・ウィリアムズさん(両方とも共同創業者)の二人の考え方の違いを明確に浮き彫りにしていておもしろいです。また、「ネット上でサービスを提供するということ」を考えるうえで、示唆に富んでいると思います。ネット上の新しいサービスとは、「既存アイデアの拡張」なのか、「新発明」なのか?
エブは、ジャックがツイッターの創業者で発明者だと書かれているツイッターの社史を修整すると告げた。
「でも、ぼくがツイッターを発明した」と、ジャックがいった。
「ちがう、発明していない」エブが応じた。「ぼくもツイッターを発明していない。ビズもおなじだ。インターネット上のものは、だれかが発明したということにはならない。すでに存在していたアイデアを拡大しただけだ」ビズがエブの意見に賛成してうなずき、おなじようなことをいった。
エブ・ウィリアムズさんは、ツイッターを「世界をのぞき見るファインダー」だと考えていたのに対して、現会長のジャック・ドーシーさんは「自分のことを語るメディア」だと考えていました。この「ツイッターとはなんぞや?」への考え方の違いが、最近のツイッターのフェイスブック化を進めているのかもしれませんね。(社内でも「ツイッターって、なんのために使うのか?」というコンセプトがはっきりと固まっていなかったということでもあります)。
そのほか、ジャック・ドーシーさんが秘密裏に動いてフェイスブックに身売りしようとしていた話や、フェイスブック側もツイッターを買収しようとしていた話、アメリカのヤフーがお話にならないくらい安い金額で買収オファーを出してきた話など、これまで知らなかったIT業界の裏事情がたっぷり詰め込まれています。
個人的に何回読んでも泣けてくるのが最終章「いまどうしてる?」です。「孤独感を癒す」ために創ったツイッターが原因で、バラバラになったかつての仲間たち……。
ブログサービスの先駆けであるブロガーを創業し、ツイッターも創業し、最初から自分のお金を投資しまくっていたエブ・ウィリアムズさんは、ジャック・ドーシーさんの裏切りでツイッターの実権を奪われる。その経験から、子供たちを「裏切らない人間」に育てようと悩む。そして、iPadもiPhoneもテレビも禁止して、絵本を家族みんなで読み聞かせる……。
テクノロジーで、人間の寂しさ、孤独感は癒せるのだろうか? いつも「ぼっち」だったITオタクたちが創り出したツイッターの創業物語を通じて、人間として何が大事なのかを思い起こさせてくれる作品です。
主人公はこの4人
エバン・“エブ”・ウィリアムズ
ネブラスカの農家で生まれ育つ。「ブロガー」をグーグルに売却し億万長者に。物静かだがビジネスマンとして非常に有能で、会社の利益を守るためならかつての友達や共同創業者を追放するという厳しい選択もする。
ジャック・ドーシー
刺青を入れた無名のITオタクのひとりだったが、のちにツイッターのコンセプトを生み出し、さらにスクエアを創業。メディアを意識した対応で「つぎのスティーブ・ジョブズ」という評判を得るまでに。いまやIT業界の巨人。
クリストファー・“ビズ”・ストーン
ジョーク好きで社交好き。ブロガーにあこがれて、グーグルに入社。エブを追いかけ、ストックオプションを放棄までしてグーグルを退社。いまでも他の3人と友人関係を保ち、宿怨を抱えていない唯一の人物。
ノア・グラス
シャイだがエネルギーに満ちたITオタク。自分の人生をツイッターにすべて捧げた。しかし後にツイッターから追放される。会社の公式な創業物語からも消し去られ、すべての肩書きを奪われた「共同創業者」。
著者はこんな人
著者はこんな人です。かっこいいですね。ニューヨーク・タイムズ紙でBits Blogというブログメディアをやっています。ニューヨーク・タイムズ紙の記者、コラムニスト、ブロガーで、サンフランシスコ在住です。本書執筆のために数百時間も取材をして、さらに創業者4人にも65時間にわたってインタビュー。本書はその濃密な仕事の成果です。