毎日寒いですね。寒いと休みの日はつい部屋に閉じこもりがちになり、その片付いてなさにうんざりする…。そんな中で出会ったのがこの本!
「もし、あなたの家が、片づけても片づけてもまたすぐ散らかってしまう家だとしたら…それはあなたの責任ではありません。おそらく、あなたの家を設計した人の責任です」と帯文にあるのですが、決して全国の設計士さん達に責任転嫁し「片付かないのは私のせいじゃないもんね!」と束の間の心の平安を得るための本ではありません(笑)
またこの本を読んだら捨てられなかったものが捨てられるとか、片付けのテクニックが書いてあるでもなく…。この本に書かれているのは「家はどのようにつくっておけば散らかりにくいのか」という、住宅設計上の知恵や工夫。設計のアイデアだけでなく、なぜその配置にするのか、その寸法がおすすめである理由を、図解してあるのですが、その絵がまたかわいくて! クスッと笑える仕掛けもあって、じっくり眺めてはニンマリしています。
「平面を間取る」のではなく「暮らしをつくる」。それが著者鈴木さんの設計方針。人間の何気ない動きや習性、住宅というものの機能や役割を知りつくした鈴木さんの提案の数々からは、家は人を囲い込むものではなく、人の可能性を広げるものなのだと気づかされました。収納の対象それぞれにページが設けられているのですが、「食材」「ピアノ」そして「神棚・仏壇」。
神様仏様を収納対象にしちゃいますか?と引っかかったら、その次は……。
「犬」最後は「猫」。えぇ!?「ワンちゃん、ニャンちゃんは家族ですけど!!」と思いながらページを繰りましたら、これまたかわいい挿絵満載だったので和みました…。何が書いてあるかは読んでからのお楽しみ、としておきます。
住宅新築の予定がある方やリフォームの予定がある方はもちろん、そんな予定全くなしな方も、家と人との関係を見つめなおす一助になるのでぜひご一読いただければと思います!
シリーズ第一弾の「住まいの解剖図鑑」も併せて読まれれば、家についての妄想はきっとより壮大になり、建てたくて地団駄を踏むこと間違いなし!
次はデザイナーが作ったわくわくする建物が満載の1冊をご紹介します。
「ミュゼ大阪」「中之島ダイビル」「あべのハルカス」など、街のランドマークとなる空間をデザインしてきた間宮吉彦氏の代表的作品を、その時の「店を取り巻く街と時代の空気」「発注者の想い」「デザインの勘所」などをラフスケッチや図面、写真を多用して詳述し紹介した本書は、ただの建築作品集ではありません。デザインで人を呼び、建物と集まった人とで街をつくるという壮大な仕事ぶりに、デザインするという事の無限の可能性を感じます。
間宮さんのデザインは、すごく尖っているとか洗練されているとかではないと思うのですが、温かみがある気がします。つい立ち寄りたくなる、新しくても懐かしさを感じるような空間をつくるのが上手なのは、きっと間宮さんがその街のあるべき未来を描き、そこから遡って1つ1つの空間を作っているからなのではないかなと、本書を読んで思いました。
「建築家の建てる建築物と、デザイナーの建てる建築物の大きな違いは、それが「公」的なものか「商」的なものかである。建築家は次代に残る公的な建築物を建築し、デザイナーは時代に消費される商業空間をデザインする。」と文中で間宮さんは語ります。
時代に合わせて柔軟に変化し、常に人に寄り添うための道具であり続ける建築だから、間宮さんの作った建物にはいつも人が集い、コミュニケーションの核として街の中で常に中心地であり続けているのでしょう。
読んで訪れてその空間を味わう事で、本書はさらに楽しめます。ぜひこの本を小脇に抱えて街へ繰り出してください。
間宮さんはデザインで人を集めて街を作りましたが、これは私たち一般人には実行が難しいこと。私たちにもできるかもしれない人の集め方のアイデアが満載の1冊はこちら。
人は誰でも「1人は好き。だけど、独りは嫌い。」な生きものなのです。みんなが求めているのは「コミュニケーション」。だから著者のナカムラさんは、6次元というギャラリーのあるブックカフェを作り、そこに人々が集まるきっかけをイベントで演出して多くの人を集めます。しかし常連客で埋め尽くされ、あたらしいお客さんを排除してしまう危険性にも配慮して、店と人、お客同士が適度な距離感を保てるように工夫し、心地いいたまり場を目指しているそうです。
行われるイベントは千差万別。苔を愛する人が語り合う場としての「コケナイト」から、カフェにいながらにして飲食しない「断食ナイト」など。全く違う客層が夜な夜な集うカフェでは、結婚するカップルが出たり、新しいプロジェクトがうまれたりする事もしばしばで、日々化学反応が起こっているという事。
まさに現代における文化サロンですね。様々なお客様にご来店いただけるという点で、書店も「6次元」のように、人が集まって楽しい気持ちになれる場所になり得るのではないかと思いました。というわけで今年も頑張って売り場作りに励もうと思うのでした。(HONZ田中のレビューはこちら)
書籍全般を毎日ウォッチしながらも、メイン担当はコミック。隣の芝生は青いと申しますが、好奇心旺盛なので(飽きっぽいとも言う)そろそろほかのジャンルも担当してみたいなぁ、と思ったりする今日この頃。
【大垣書店烏丸三条店】
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