著者の福さんと初めてお会いしたのは、今はなき(移転してしまった)本郷三丁目の喫茶店「Qino’s (キノーズ)」でした。容姿端麗。快活で、絵に描いたような好青年というのが第一印象。
話の内容はもっぱらジャニーズ。当時ジャニーズJr.の筆頭だったKis-My-Ft2の魅力から「デビュー組」の直近、ジャニーズ事務所のこれから、ジャニーズが言及された文献まで、会話は熱を帯び、3時間を超えました。
アイドル雑誌を見ながら、熱心に語り合う男2人。カウンターで黙々とレジを打っていた女性店員の目にはどううつったのか、……いまさらながら気になります。
それ以降、ちょくちょく会うようになりました。時間があればコンサート、舞台などを観劇し、雑誌のインタビュー記事などの収集にも余念がない。ありとあらゆる情報を貪欲に、楽しげに吸収してゆく。その様に、この人はどれだけジャニーズが好きなんだろうか? このエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか? と感嘆したものです。
2009年には、さすがというか、やはりというか、“ジャニーズファン”をテーマに、台湾に留学されます。現地で会ったときも話す内容はやはりジャニーズでした。
ここにいたって、福さんにとってジャニーズは、もはやいち事務所の名前ではなくなっていることにようやく気がつきます。
ジャニーズは戦後のショービジネスの変遷を体現する“生ける歴史の教科書”です。またジャーナリスティックに見れば、メディアの支配者ともいえる。巨大なファン・コミュニティはオーディエンス研究の対象ともなりえます。……無学の身がバレるのでこのへんで止めます。福さんと話すたびに「ジャニーズ」がこれほど豊かな色彩を持つ存在なのかと驚かされます。
本書は「ジャニーズ」を追い続けたひとりのファンの記録です。
彼がいつも、生きいきとしているのはなぜか?
それは好きなものに全身全霊でぶつかっているからです。計算抜き、打算抜き、男であるハンディ(?)もものともせず応援する様は、なによりも読み手を元気にさせてくれます。
ジャニーズ好きな人はもちろん、ジャニーズに興味もない人も、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。
アールズ出版 編集部 石井司
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