きっかけは今年の4月中旬、成毛眞さんからのFacebookメッセージだった。
「ホリエモンに会ってみませんか? 彼からレストラン版HONZのようなものを作りたいと言われたんだけど」
堀江さんとはこれまで、収監される前に一度会っただけ。が、「レストラン版HONZ」というコンセプトに惹かれて会ってみることにした。彼がまだ社会復帰して二週間ぐらいのことである。
私は文藝春秋で「東京いい店うまい店」というグルメガイドの編集長を務めている。「いい店」は1967年に創刊され、匿名筆者で文章だけで料理店を評価したグルメガイドの草分け的な本。その選択眼については評価していただいているが、「食べログ」などネットグルメが主流になってきてから、二年に一度の紙のガイドの限界に悩んでいた。
そんな時に会った堀江さんの言葉は、のっけから新鮮だった。
「食べログって雑音が多いと思うんですよ。僕は信頼された人が言ううまい店だっていう情報だけが知りたいんですけど、あの評価って、どういう素地の人が書いたかわからないし、うまいかまずいか以外の情報で点数が変わる。もっと信頼できるガイドを作りたいんですよ」
なるほどなあ。これって私が漠然と思っていた既存のガイドへの不満をきちんと整理してくれている。うまいまずいは個人の嗜好ではあるが、それなりに食べこんでいる人なら、評価はある程度収斂する。そんなキュレーターを集めて作るガイドは面白そうだ。
そんな思いから堀江さんとタッグを組み、テリヤキプロジェクトは始まった。堀江さんと私で「この人なら信頼できる」と思えるキュレーター(のちにテリヤキストと命名される)を互いに選び、投稿を依頼。あわせてアプリ制作、運営の会議も並行して行った。
ネットの世界はこれまで単なる傍観者で、アプリ制作にいたって全くの素人だったが、制作にかかわる若い技術者、デザイナーの力は見事で、こちらの要望をどんどん形にしてくれた。
また、テリヤキストからのリストも素晴らしく、いい店に関してはそれなりに知っているつもりだったが、「こんな店があるのか」という隠れ家料理店がどんどん上がっていく。これまで、人から聞いたりメディアで読んだりして興味を持った店はメモをしていたものだが、これが出来ればその必要もなくなりそうだ。
制作と並行してプロモーションの作業も進んだ。「テリヤキ制作委員会」が開催され、編集長に任命された蛭田一史さんは、多才であるがゆえに面倒くさい面々をうまく仕切って、テレビ、新聞、出版、ネットをどのように使ってテリヤキを広めていこうか、具体的な施行策を詰めていった。
夏はあっという間に過ぎ、アプリのローンチ記者会見は11月3日に決まった。最後の一週間は、iPhone、Androidふたつのアプリの操作性向上のため、堀江さんから最後まで厳しい指摘が飛んだ。
そして当日。会場は青山の琉球チャイニーズ「TAMA」。60人ほどでいっぱいの小さい会場だったが、その分、キッチンの臨場感が客席に伝わってくる。テリヤキストの面々もほとんど揃い、メディアの人々にお披露目と相成った。
北は札幌在住ながら日本全国を食べ歩く小浦場さん、関西はグルメ番組プロデューサーの本郷さん、南は「福岡口福倶楽部」代表の口福ヤマトモさん、「食べログ」の4・0以上はほとんど食べ歩いたという永田さん、タベアルキストを名乗るマッキー牧元さんなど日本全国の食べ歩きの猛者たち。さらには処々の事情で名前を秘する「ミスターX」。彼らがこれまで明かしてこなかったグルメ情報が、この「テリヤキ」をダウンロードすればすぐに読めるというわけだ。
検索は有料(月400円)だが、これが使いやすい。「現在地検索」を使えば、近くのうまい店がすぐわかるし、京都や大阪の名店を探すのも簡単。自分の好きなテリヤキストのおすすめ店を制覇するのも楽しそうだ。
ローンチ当初は、遅い、にぶいなど問題点を指摘されたが、日々向上されているし、今後もどんどん使いやすくします。「うまいものが食べたくなったらテリヤキを見よ」を合言葉に、グルメアプリの最高峰を目指しますので、さらなる改善案があれば、どしどしご指摘ください。
「東京いい店うまい店」編集長 柏原光太郎
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。HONZメールマガジンにて先行配信しています。