紅葉の季節、いかがお過ごしでしょうか。今月はどーんと趣味に走り、建築棚からオススメしてまいります。どうしよう。土木もいいけど、都市計画も、家具の本も、あ、造園、家づくり、照明、なんて棚の前で唸ってしまったのですが、独断と偏見で無理やり4冊に抑えましてございます。ドヤ顔失礼いたします。
まずは一番高額な『誰も知らない「建築の見方」』。建築図鑑って、本当に色んな種類があります。どれも似たような内容なんじゃないの、とお思いのお客様、そんなことはございません。この図鑑は、紀元前から現代まで、時代を追いながら世界各地の文化を代表する建築を解説していきます。導入部ではこのように書かれています。
「本書は、知識と経験豊かなガイドのように、あなたを世界有数の53の建物の探検ツアーに連れて行ってくれるだろう。」
そう、この本はただの図鑑ではありません。読者をその建築物まで導き、内部を案内し、各部を解説してくれる、名ガイドでもあるのです。紹介されるもの毎につけられた「誌上探検ツアー」は必見。私、海外旅行なんて夢のまた夢ですが、世界中の有名建築を見て回ったような気持ちになりました。お値段¥3800+税。日本一お安い世界ツアーでございます。この商品は海外出版物の翻訳なのですが、日本からは姫路城と、隅研吾の木橋ミュージアムが掲載されております。(YouTube動画「新建築2010年11月号 WEB連動企画 梼原・木橋ミュージアム」)[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=WNpQc5ccMDs[/youtube]
さて、お次はそんな世界の建築を訪ね歩いた若手建築家の旅の記録を。『建築武者修行―放課後のベルリン』。著者は内田樹氏の自宅「凱風館」を設計した建築家。『幻想都市風景』、『みんなの家。建築家一年生の初仕事』と昨年立て続けに刊行された著作も注目を集めた、今その動向から目が離せない新進建築家の1人でございます。ベルリンの設計事務所で過ごした日々、休暇を利用して訪ね歩いたヨーロッパ各地の建築、ドローイングを通して交わす建築物との対話。どこか朴訥とした調子で語られるそれらは、一人の若者の真っ直ぐで静かな情熱が息づく過去に、読者を引き込みます。『幻想都市風景』を既読の方には、その思想背景を知る手がかりとして読んでいただけるかと思います。芸術ファンにも見逃せない一冊です。
こちらも要チェックな一冊が発売されております。売れっ子建築家・谷尻誠氏が、またまた面白い本を出版!『談談妄想』は、氏が21人のゲストと繰り広げる対談集。帯に一言、「仕事が楽しい人は、みんな「妄想」上手。」素晴らしい惹句ですね。実は谷尻誠氏といえば、その処女作『1000%の建築』が静かなブームとなった、建築書界注目の著者。建築家が書いた本ながら建築書コーナーに置かれないように、という編集方針でまとめられた本書(すいません、建築書棚に置いています。面陳しているので許してください。)には、多くの人に建築を好きになってもらいたいという思いが込められています。違うジャンルで活躍する相手と対談するうちに、どんどん建築の概念が置き換わっていく快感をぜひご体感ください。
最後は公共空間の可能性を探る一冊。『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』を。普通の不動産屋が切り捨ててしまうような物件の魅力を見出し紹介する、新しい価値観の創造に成功した不動産サイト「東京R不動産」。テレビ番組「ガイアの夜明け」にも取り上げられたグループですが、そのディレクターの1人、馬場正尊氏がパブリックスペースについての理論をまとめ、実践例を紹介、アイディアを付け加えていく本書。この中で語られるのはまさしく、公共空間に対する意識や考え方そのものの再構築です。先入観や既成概念を取り払うことは時に危険なことかもしれませんが、コモンスペースの在り方や運営の幅を広げる自由な発想に触れることを恐れず、ぜひ手に取っていただきたいと思います。もしも弊店でお求めくださいましたなら、富山県の誇る自由広場「グランドプラザ」に憩い、ページをめくってくださいませ。
それではまた来月。雪の降る前にお会いできればと思います。