『二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ』 鳥本にハズレなし!

2013年9月16日 印刷向け表示
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二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ

作者:中村 浩志
出版社:農山漁村文化協会
発売日:2013-08-02
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現在、お台場の科学未来館でサンダーバード博が開かれている(9月23日まで)子供のころ、楽しみに見ていた番組が、今でも人気を誇っているというのは嬉しいものだ。

この本を紹介するのにちょうどいい、と喜んだのだが、“サンダーバード”はネイティブ・アメリカンの伝説の鳥のことだそうだ。全く違うけど、まあいいか。強引だがそのまま日本語にすれば雷鳥。日本の特別天然記念物の高山にいる鳥で、絶滅が危惧されている割には、登山者がよく目にする野鳥である。信州大学に通っていたころ、夏休みに登った山で、雛を連れたメスを目の前で見て、どうしてこんなに人間を恐れないのだろう、と驚いた記憶がある。

つい最近も登山とバード・ウォッチングが趣味の友人から、北アルプスで撮られた写真が送られてきたばかり。雛がかわいい。

本書は、信州大学教育学部の特任教授、名誉教授であり、鳥類生態学者でライチョウ会議 議長(2000年~).日本鳥学会 会長(2006~2009年)を歴任したスペシャリストが書いた、ライチョウ研究の現在と未来への希望である。

何度も主張しているが、もう一度、ここで声を大にして言いたい。

鳥本にはずれなし!

現在、ライチョウは北アルプス、南アルプス、御嶽山、新潟県の火打山・焼山といった本州中部の高山帯のみに生息し、最近の調査では生息数は2000羽以下とみられている。この十数年の間に中村先生の研究によって生活の実態が飛躍的に解明されているという。

ライチョウの仲間は世界中にいる。その南限が日本の高山帯で、独特の進化を遂げた。氷河期に日本に移り住んだと思われるライチョウは2万年の時をかけて日本の高山環境に順応したのである。その過程をDNAの解析によってほぼわかってきたのだ。

研究に際しては、生活形態を知らなくてはならない。中村先生の恩師でありライチョウ研究の泰斗であった羽田健三先生は、観察のみで捕獲することを許さなかった。しかしそれでは実態がわからない。そこで一つの山に生息する個体をすべて捕獲し、標識をつけて経過観察をすることになった。

最初はカスミ網でトライしたが、人間を恐れないとはいえ飛び越えたりすり抜けたりしてハイマツの下に隠れてしまう。

「何をしている、ライチョウより速く走れ!」と学生たちに檄を飛ばすのだが、おっとりしているみえるライチョウも。いざとなると俊敏で速く走れるのである。

そうだろうなあ。しかし一度が決めた全島捕獲。中村先生は知恵を絞る。そして考えられた方法が、ライチョウ釣り。一見、危ないようにも見える一羽ずつ釣り上げる方法が、人間を恐れないライチョウ捕獲に一番合っていた。中村先生は、何よりもライチョウを傷つけることを恐れている。いつも間近で観察している研究者でなければ思いつかないことだろう。

全羽捕獲し標識が付いたところで、初めて研究が始まる。学生とともに山に通い、低木の下にあるライチョウの巣を確認し、年に3回も換羽する理由を考察し、オスの縄張りを数えて総数を推察し、血液採取によって系統を探る。体力勝負で地道な作業が、なぜライチョウが2万年も日本の極地で生き延びられたのか、徐々に全貌が解明されていく。自然と日本人の信仰とが合わさった偶然は、まさに奇跡としかいいようがない。

中村先生は憂える。ライチョウは徐々に減りつつある。気候、サルやイノシシの出現など理由は様々あるだろう。しかし、まだ保護の余裕がある今、国を挙げて保護しなければならない、と。絶滅してしまったトキやコウノトリを取り戻すために、人はどれほどの苦労とお金を使ってきたのか。

威風堂々したオスのライチョウが目に付く本書は、ぜひカバーを外してみてほしい。雪の上で真っ白に換羽したメスとそれを守るように立つオスの姿。人間はその向こうで邪魔をしないように、保護の手を差し伸べなければならない。

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作者:小林 照幸
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復活をしたとはいえ、トキの絶滅は紛れもない事実だった。大宅賞受賞の傑作。

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そしてその復活の過程。レビューはこちら

コウノトリ、再び

作者:小野泰洋
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発売日:2008-08-27
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