新書の刊行点数が毎月凄い。
正直、すべての書名をチェックできないので、記憶に残るような過激なタイトルに目がいってしまう。
そうだとしても、これはかなり挑戦的なタイトルだ。
私には女性の排卵が見える―共感覚者の不思議な世界 (幻冬舎新書)
(2011/05) 岩崎 純一 |
「排卵が見える男」なんて少なくとも女性は気持ち悪くて近づきたくないと思うだろう。
しかし著者の名前に見覚えあった。
音に色が見える世界 (PHP新書)
(2009/09/16) 岩崎 純一 |
共感覚者とはどのような人かご存知だろうか?
五感が交じり合って意識してしまう、感じてしまう人たちのことだ。
たとえば色をみると味を感じたり、音を聞くとどこかが痒くなったり、数字が音として感じられたりとその人によって認識の仕方は違うが、複数の感覚を一緒に体験している人たちのことである。
実はこういう人たちは意外に多くいるようなのだ。しかし大人になって他人とは違うと意識したとたん、口をつぐんでいたらしい。幼い子供には多くあり、「どの数字が好き?」という問いに応えた理由を聞くと「甘い」とか「色がきれい」などの返事がかえってくるそうだ。
さて本書だが、著者は生まれたときから女性の周りにぼんやりと色を見ることができたという。その色味や濃淡、明暗の変化で、その女性が性周期のどこにいるかがわかるのだそうだ。心痛などで生理周期が乱れたちするとたちどころに色に変化が現れるので、この著者は尋ねることも出来ずにヤキモキするというのがすごい。
妊婦のそばにいくと一緒に悪阻を経験したり、生理通のひどい女性に出会うと、脈拍が上がり微熱をだす。幼いときから受けていた感覚なので、女性には周期があることは当たり前に認識していたそうだ。普通の男性がどの段階で女性の生理について知るか、そのタイミングはさまざまだろうが、この著者のような話はきいたことがない。
しかしこの10年ほど自分の感覚について調べたり、専門家に相談したりして出した結論は、幼い男子や大昔の男性、動物のオスには普遍的に備わっていたのではないか、という結論に達し本書を書き上げたのだ。協力者を募りこれまで記録をとってきた女性は50人以上。彼は文字や音に色を見ることが出来る共感覚者でもあった。
なんとも薄気味悪いタイトルなのだが、読んでみると非常に真面目な調査記録である。彼が過去の権力者であれば、自分の遺伝子を多く残す目的のために使うだろうし、よからぬことを考えるやからが出てきてもおかしくない。普通の人から見たら超能力の一種に思える。彼はその能力が何かの役に立たないか深く考えていく。
共感覚者の本としては数年前、大評判となった作品がある。世界的にもベストセラーになった。
ぼくには数字が風景に見える
(2007/06/13) ダニエル・タメット |
この本は映画『レインマン』の主人公のようにサヴァン症候群で数字に対する能力が突出している著者が、共感覚という側面からその能力を解説していく。
今年出た同じ著者の作品はずばり共感覚である。
天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界
(2011/02/01) ダニエル・タメット |
脳の世界は未知の分野がたくさん残されている。だからこそ興味は尽きない。本書がベストセラーになってから、ひたすら隠していた能力が実は他の人にもあることを知り、安心したという話も聞いた。
共感覚について興味をもたれた人にはこちらの本もオススメしたい。
共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人
(2002/04) リチャード・E. シトーウィック |
恵まれない科学者の泣き言のような箇所も多いが、具体例が豊富である。
ねこは青、子ねこは黄緑―共感覚者が自ら語る不思議な世界
(2002/07) パトリシア・リン ダフィー |
私がはじめて「共感覚」という存在を知った本。