「新聞読んでたら、精子力? 吹いたWWW」
「俺も精子力発電したいorz」
これは、本書の新聞広告を出稿した日のツイッターに寄せられた声だ。「精子力」。別に笑わせるためにタイトルつけたんじゃないんだけどな。注目してくれたのは嬉しいが。これが「卵子力」という本だったら、笑う人いるのかな?
このコーナーは編集者の裏話的なお話をしてもOKとのことだったので、なぜ、このタイトルにしたのか、お話したい。本書は、男性の性機能についてまとめた真面目な本である。著者は男性不妊のパイオニアである岡田弘先生(獨協大学越谷病院 泌尿器科主任教授)。ご存知の方も多いかもしれないが、不妊の原因は男性と女性半々にある。しかし我が国で不妊治療を行っているのは圧倒的に産婦人科医だ。男性不妊専門医は、全国で50人にも満たないのが我が国の現状。
つまり、男は女ほど「不妊治療」に積極的じゃない。「妻に原因があるのなら治療をしてほしいが、自分に原因がある場合は、積極的な治療はちょっと」とおよび腰になる夫が多い。「赤ちゃんが出来ないのは、おそらく妻のせい」と漠然とやり過ごしている夫も多いことだろう。一方、妻達はそんな夫の心の内を読み、「そんなのズルくね?」と味気ないセックスをしながら心の中で呟いてみる。そりゃ、少子化は止まらんわ。
そんなわけで、「男性不妊」という言葉をタイトルにつけると、本は売れないらしい。一番読んでほしい人達が、「俺は関係ない」と手に取ってくれない。だから、懸命に考えたのです。「男性不妊」と打たずに男性にこの本を読んでもらえそうなタイトルを。
そうこうして浮かんだ言葉が、「精子力」でした。岡田先生は大変真面目で権威ある先生なので、少々ビビりながら「あの、『精子力』というタイトルはどうですか?」と切り出すと、「それ面白いね。いいんじゃない」と二つ返事でご承諾。なんて心の広いお医者様。しかし、弊社社長(七十代男)及び営業担当(四十代男)に相談すると、「そんなタイトル、恥ずかしくて買えないよ」と反論されました。もう少し言葉を足してくれ、と。
「男はね、小宮が思っているよりデリケートな存在なんだ!」……私は、タイトル会議において何度このセリフを営業男子から言われたか、わかりません。(弊社刊『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』宋美玄著)しかり。
「では、【男をアゲル「精子力」】では、どうでしょうか?」(私)
「それだと、買う人がそもそも精子力が低いみたいで買いづらい」(営業)
「じゃあ、【女が悦ぶ「精子力」】は?」(私)
「それだと、買う人が女性を悦ばせたことがないみたいじゃないか」(営業)
……あ~もう。めんどくさいよ、デリケート過ぎて、男。
というわけで、紆余曲折を経てたどり着いたタイトルがこの、『男を維持する「精子力」』です。私は気に入ってます、かなり。精子だって、卵子と同じく老化します。いつかは赤ちゃんを…と漠然と思っている二〇代、三〇代の男性の皆さん。恥ずかしくないので、読んでください。日本のために。愛する人のために。
ブックマン社 小宮亜里
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。