梅雨も明けて、日差しの眩しい季節がやって来ました。書店業界の夏といえば、文庫のフェアの季節です。新潮文庫の100冊や、ナツイチ、発見!角川文庫など、各出版社がやっている文庫のフェアが書店を彩ります。ノベルティグッズも充実していて、書店もなんだか華やかな雰囲気になりますよね。
昨年からは出版・書店業界の有志の人がはじめた文庫のフェア、ナツヨムというのを開催している書店もあります。近頃はこのような書店員達が独自にはじめたフェアや賞、フリーペーパーが盛んです。そんな中、わたしを含め、このコーナーを執筆しているメンバーの数名が参加しているフリーペーパーがあるので紹介します。
『晴読雨読(はれどく)』は全国の書店員が集まって、本当に好きな本をおすすめする書店横断フリーペーパーです。
このフリーペーパーは季刊で、現在2号まで発行されています。2号のテーマは「うれしはずかしはじめての○○」ということで、チェーンの枠を飛び越えて、有志の書店員がはじめての○○本を紹介しています。普段はこちらのお店で配布をしているのですが、昨日より、こちらからダウンロードすることができるようになったのでよかったらみてやってください。
なお、そのブログから創刊号もダウンロードできます。手前味噌で申し訳ないですが、フリーペーパーにしてはかなりクオリティが高いものになっていると思います。しかも執筆陣の中には業界では有名な方が何人もいます。夏は暑いけど、本屋はもっと熱いことになってるので、要チェックです。
と、なんでこんなビジネス書と関係のない話からスタートしたかというと、ビジネス書にとって夏は苦境の季節なのです。正直なところ今月はこれ!という新刊があまり多くないんですよね(苦笑)。まぁ、暑い日にわざわざビジネス書なんて読みたくないという気持ちもわかります。でも、こういうときこそ、他の人と差をつけるチャンス!ということで、読めば人と差をつけられるかもしれない本を紹介していきます。
まずは『TEDトーク』。正直なところ、今月売りたい本はこの本だけといっても過言ではありません!(笑)そんな意気込みで、先月の『LEAN IN』同様に思いきった数を注文してしまいました。出版社の初版部数をみたら、あんまり刷ってなくて、1店でこんなにいっぱいとっちゃって大丈夫なの?と少し不安を覚えたりもしてますが、この本が売れないわけがない!
その根拠は『LEAN IN』同様に、この本は洋書がものすごく売れているのです。某書店の洋書ランキングでは昨年からずっと上位をキープしており、いまでも常にこの本と『LEAN IN』がトップの座を争っている状態。洋書でそれだけ需要があるということは、翻訳書にも需要があるはず。という判断でまた暴走をしてしまいました。
本の内容はというと、TEDトークにおけるプレゼンの手法がまとめられた本です。TEDでの講演はインターネットでも視聴できますし、テレビでもNHKがスーパープレゼンテーションとして放映していますので、おなじみかと思います。そのプレゼン手法からいくつかの例をとりあげ、効果的なプレゼンテーションの方法をまとめた本だそうです。著者いわくスライドを使わないプレゼンがいいとのこと。プレゼン本では『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』や『プレゼンテーションZen』といったジョブズ流のプレゼン本がヒットし、定番書となっていますが、そこに新しい風を吹き込んでくれるのではないかと期待しています。
では、これにて、今月は失礼!と言いたいところですが、これだけでは、他の書店員に示しがつかないので、その他オススメの新刊、近刊をいくつか紹介していきましょう。
経営戦略の本としては異例の大ヒットをして、いまでは定番書となっている『ストーリーとしての競争戦略』の著者、楠木建さんの新刊です。プレジデントオンラインで連載していたものをまとめたもので、楠木建さんの思考のセンスとスタイルを知ることができる1冊とのこと。『ストーリーとしての競争戦略』発売以降、戦略関連本が熱く、最近だと、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』という本がめちゃくちゃ売れています。こちらも要チェック!
『ハイ・コンセプト』や『モチベーション3.0』など、著者買いをしてまずまちがいないといえるダニエル・ピンクの最新刊。今回のテーマはセールス。といっても営業マン向けの本ではありません。現代人はかなりの時間を、他人を動かして影響をあたえることに費やしている。つまり誰もがセールスパーソンたりえるのだ!ということで、人を動かすために必要な新しい3原則「同調」「浮揚力」「明確性」を紹介しています。
ダニエル・ピンクという人は『フリーエージェント社会の到来』のように、先見性に富んだ本を書く著者です。つまり今のうちにこの本を読んでおくと、近い将来1歩も2歩も他の人より先んじられる可能性が高いのです。これを読まない手はないでしょう。
アントレプレナーシップにおいて、長年全米ナンバーワンの評価を受けているバブソン大学という大学があるそうです。そこの学長である著者が「不確実な時代を生き抜くために必要なこと」を書いた本。すぐにはじめなさいというジャスト・スタートというタイトルに心惹かれます。『バリュー・プロフィット・チェーン』の著者なので、この本も期待できそうです。
7月はこれらの本を中心に、先月紹介した『LEAN IN』、『不格好経営』、『未来の働き方を考えよう』などをさらに売り伸ばしていきたいところ。『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』に関してはなにがあっても売らなきゃ各所に迷惑をかけてしまうので、色んな手を駆使して売っていきたいと思います。みなさまもぜひ買ってくださいね。