iPS細胞のネーミングのアイディアは実はiPodからインスパイアを受けたとiPS細胞の第一人者の山中さんは言っている。そんな身近なことから、いざノーベル賞級の大発見まで、いったい科学者という人たちは何を考えているのか?2009年にノーベル物理賞を受賞した益川敏英さんとiPS細胞の第一人者である山中伸弥さんが等身大で対談している一冊。
対談で最初から最後まで終わってしまう本書であるが、一方が質問して、一方が答えるわけでなく、インタラクティブに質問をしあっている点が個人的にユニークに感じたし、それぞれ化学者らしく(偏見かもしれないが)気を使わずに、質問し合っている点、そして、答えが用意されているわけではない対談なので、親しみのもてる内容になっている。
iPS細胞ってなんだっけ?、なんでこの人はノーベル賞取ったんだっけ?レベルの人が読んでも断然おもしろい。一体世紀の大発見を行う人の普段の行動や躓いたときやアイディアがでなくなったときに何を考えているのか、案外身近なことがわかる。
ただ、最後に「コロンブスの卵」で締めくくっているところがぼくが個人的に本書でもっとも好きなところ。
「「コロンブスの卵」はまだまだたくさんあるはずです。それを必死に探していくのが、我々科学者に与えられた使命だと思います。」と山中さんはおっしゃっているが、「コロンブスの卵」と表現されると、身近な生活でも発見できそうな気がして、科学者じゃなくとも、まさかノーベル賞級の発見ができるのではないか?と勝手に勇気づけられたわけである。