物理学はこんなこともわからない (PHPサイエンス・ワールド新書)
文部省などの統計によれば、高校で物理を学ぶ生徒は極端に減っているそう。日本全国にはおよそ5050校近くの高校がある。それらの高校に在学する高校生の内、物理を学んでいる生徒は、多くて3割ほど(実態はもっと少ないはず)。そんな僕も高校一年生のときに、物理では赤点以外をたたき出した記憶がない。そして、当時、建築学科と農学・生物系で進路を迷っていた僕は、迷うことなく農学・生物系を選択することとなり、高校2年以降物理に触れることなく、生物と化学を専攻した。
本書の帯に「身近な減少にこそ新しい科学の可能性がある」と書いてあるように、私自身、大学に入ると、やっぱり「物理学」が世界の原理を創っているのではないかという核心を得、熱力学などの授業を勝手に選択肢、その悔しさを晴らしたものである。
僕が本当に未だに驚きを隠せない原理・方程式が二つあった。一つは、「三平方の定理」である。あんなに美しい式が成り立つことを発見した人は天才としか思えない。そして、もう一つは、「てこの原理」だ。てこの原理の発見で、世界は大きく飛躍したのは間違いない。人間の持つ力を増幅する方法を発見したのであるから。
そして、最近はエネルギー・ハーベスティング(環境発電 「energy harvesting」)の分野にかなり魅了されており、特に振動発電、温度差発電(ゼーベック効果を利活用)にはかなり驚いている。こういった現象も物理なのか?と思うと、学ばずにはいられないわけである。(※情報収集のため、勝手にtwitterすら創ってしまった)
詳しくはこの記事へ。
前段が長くなったが、本書は「物理学ではわからない自然現象」が書かれているわけである。つまりは、物理学という学問の学際がわかり、逆に物理学の輪郭を明確にしてくれている印象すら受ける。たとえば、南半球と北半球で、水の渦の巻き方が違うという現象(コリオリ力という)。世界を旅するバックパッカーの間では有名な話であるが、実際にそれを地球の自転や傾斜で説明できるのか?ご丁寧に細かな公式で証明されていたりもするが、そんなものを飛ばして読んでも十分楽しめる。
他、気になるトピックをあげるとすれば「水の上を走るとかげ」(そもそもそんな忍者みたいなとかげが存在することすら知らなかった)、「鏡のなかの左右と上下」(映る姿をそのまま何も疑問を持たずに見ていたが、本書を読むと鏡の世界の不思議に浸ってしまう)「磁石はどうして肩こりに効くのか」(そういう効果をうたうCMをよく見るが、そもそも磁力が体に聞くなんて不思議だ。電磁波は忌み嫌われているのに…)
冒頭にもあるように、物理学は日本でほとんど学ばれていない現状だ。しかし、その一方で日本は湯川秀樹博士を筆頭に、6名ものノーベル物理学賞の受賞者を輩出している。
(物理学賞より多いのは、化学賞で7名)経済学部は腐るほど存在する日本の大学。しかし、2010年現在、ノーベル経済学賞を受賞した日本人はいない。これもまた摩訶不思議である。
おまけ『水の上を走るとかげ「バシリスク」』