一昨日、開催された『グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット』に参加するため、シェリル・サンドバーグが来日していたようだ。グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミットとは、女性がいきいきと働くことで社会を活性化し、経済成長につなげるために、グループが総力を挙げてさまざまな活動を展開するプロジェクトだという。
まさに『LEAN IN(リーン・イン)』に書かれている内容とぴったりのイベントである。このイベントを知ったときにはすでに募集が締め切られていたのだが、定員850名のところ、10倍近くの応募があったらしい。シェリル・サンドバーグの生の声が聞けるなんて、そんなチャンスはめったにないと思うのに…。と、後悔してもときすでに遅し。しかたがないのでTEDでのシェリル・サンドバーグのトークを見て気分を紛らわせることにした。
『LEAN IN』はこのTEDでのトークが元となっている。本の中でもこのTEDでのトークの話が出てくる。周りは彼女のキャリアについて話を聞きたがっていたようだが、彼女は「なぜ女性のリーダーは少ないのか?」という話をTEDではした。これが大いに反響を呼び、本の発売に至った。アメリカではこの本は大ヒット、女性のキャリアについて大きな論争が起きている。
シェリル・サンドバーグはこの本を自分の領域でトップに就く可能性を高めたい、全力でゴールを目指したい、そう考えている女性に向けて書いたそうだ。しかし女性だけに読んで貰いたいわけではないとも言っている。男性にも訴えかける内容の本なのだ。そう、この本は女性よりも男性が読むべきなのだ。なぜなら、現実問題として世界を動かしているのは男だからだ。
本の中にはさまざまな統計データが出てくる。そのデータを見る限り、世界は男女平等と言える状況にはけっしてなっていない。とくに日本は先進国の中でも男女格差が極めて大きい国であると書かれている。この状況を少しでも改善するためには、この本を多くの地位の高い人に読んでもらい、女性に対する理解を高めてほしいと思うのだ。
とある実験からできる女は嫌われるという結果がでている。成功と好感度は男性の場合正比例するのだが、女性の場合は反比例するというのだ。成功した男性は男からも女からも好かれるのに対し、成功した女性は男からも女からもあまり好かれないという現実がある。女性が上を目指すと、同性にも足を引っ張られる可能性が高い。
また男性・女性のステレオタイプというものはいまだに根強い。男は外で仕事、女は家で家事。そんなのは古い考え方だ!と私も思うのだが。現実は違う。無意識のうちにそういった見方をしている人が世の中には多いのだ。たとえば仕事で保育園に子供をあずけていて、残業で迎えに行くのが遅くなったとする。迎えに行くのが男性であれば、そんなに目くじら立てて怒られることはない。これが女性だと方々から叩かれることになる。いまだに育児は女性の仕事だと考えている人が多いのだ。
こういった現実を知ることは重要である。このようなバイアスが存在しているということを知っていれば、女性のことをきちんと評価できるようになるはずだ。男女格差を少しでも改善していくために、やはりこの本はたくさんの人に読まれてほしいと思う。と、こんなことをいうとお前はフェミニストか?だとかジェンダーの話?とか思って毛嫌いする人もいるかもしれない。
そんな人にはキャリア論としてこの本は読むことも可能なので、毛嫌いをせずに読んでほしい。仕事を決める上で重要なのは成長(それも急成長)であるとか、地位もやりがいのある仕事も待っているだけではやって来ないなど、具体的なアドバイスも満載だ。とくに女性は、勇気をもらえると思う。だからこそタイトルのとおりLEAN IN(勇気を持って一歩を踏み出す)してもらいたい。
シェリル・サンドバーグの経歴は『6月のこれから売る本』の中にも書いたが、凄すぎて参考にならないと思う人も多いだろう。しかしそんなことはない。彼女がいうキャリアというものはジャングルジムのようなものだという考え方には大いに賛同した。
女性には出産という一大イベントがある。キャリアが梯のようなものだったならば、産休をとったときに降りざるを得ない現実がある。しかしジャングルジムであれば、一度横にそれても再び上をめざすことができる。このキャリアの考え方はこれからもっと広まるといいなと思う。人生は寄り道があるから楽しいのだから。
最後にこの本の中で成功をしたい人に誰もができる最高のアドバイスというのがあったから紹介しよう。
成功の秘訣なんてないってこと。要するに、自分に与えられたものでベストを尽くすしかない
元も子もないけど、こういうのこそ真理なのだ。アクションを起こそう。そうすれば世界はいまよりもきっとよいものになるはずだから。
グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミットでのシェリル・サンドバーグの講演がUstのアーカイブに残っていた。よかったらこちらもどうぞ。