この本は将来、自分の名前を世に打って出よう、有名になろうと思っている方は必読である。テレビに出たり、有名になると急に親戚が増えるというではないか。物理的に増えるのではなく、希薄だったつながりを、有名になったと同時に無理やりにでもこじつけて、親戚だ!とでも言いたいのだろう。遠い親せきに有名人がいる輩が、有名人と血のつながりにあることを誇りに思って、公言している人はよく見かけるものだ。
しかし、親戚が増えるのは結婚する時も同様である。嫁はたった一枚の書類で、籍が「山本」に入れ替わり、26万人以上いると言われる山本族になったわけである。それは嫁&夫から見れば、今まで完全に視野に入っていなかった赤の他人が一瞬にして、親戚になるのである。ふと、心によぎったのは、書類を出すだけでなく、自分のご先祖さまについて結婚を機にたどっていき、家系図を作ってみるのは、ウェディングケーキに入刀する前にやるべき重要な共同作業ではないかと。
本書は著者の高橋氏がふとしたきっかけから自分の祖先をたどっていったそのプロセスを軽いタッチで共有してくれている。タイトルから連想されるように、自分のご先祖さまを知りたくなる人も現れる。また、自分のご先祖さまをたどっていけば、有名人になる以上に、結婚する以上に、親戚が増えたと感じるのであろう。
「家系図を調べて見たら、実は伊達正宗の血を引き継いでいるってわかったんだよね」「1582年の本能寺の変のとき織田信長の護衛として、僕のご先祖さまが活躍していた、彼が明智を討っていれば歴史が変わっていたかもしれない」なんて、言えるようになれば、ちょっとした世間話・自慢話にはもってこいである。ご先祖さまとのつながりで、急に自分が日本史と関係があり、歴史と繋がっている感覚から、株があがった気持ちになれるはずだ。
結婚以外で、ご先祖さまをたどっていくよいタイミングがもう一つある。それは自分を売り込む必要がある就職活動の時期、21歳ごろ。悩んでいる多くの学生たち、コネがなくて困っている学生たちは、自分のルーツを探索していけば、血のつながりからの自己分析ができ、自分のもしかしたらのコネクションを発見することができるかもしれないという効用がある。期待しすぎないように。