『カイジ』(講談社ヤングマガジン刊)の読者ならば、誰もが考えたことがあるに違いない。「カイジはどうしたら救われるのか」と。
『カイジ「命より重い!」お金の話』は、そんな世間話から生まれた。
あるとき「最近『カイジ』にはまっている」と本書の著者の木暮さんが話してくれた。「『カイジ』は資本論と同じことを言っている」という木暮さんの主張は、熱がこもっていて、そして純粋におもしろかった。それでふと「経済学でカイジの結末を予想したらどうなるんですか」と聞いてみた。当時『カイジ』は、ヤングマガジンでの連載も中断していて、読者としては続きが気になるところだった。(現在は連載が再開されている。)経済ジャーナリストの木暮さんがカイジの結末を描くとしたら、どうなるんだろうと興味を持ったのだ。
ワクワクする気持ちで木暮さんの読み解く「カイジと経済学」の話を聞きながら、「これは本にしなくては」と強烈に思った。そして、「本にしたいです」と口にした途端、読んでもらいたい人の顔が浮かんだ。それは、お金を貸したことがきっかけで、疎遠になってしまった友人の顔だった。
『カイジ』は、20代そこそこの青年が、300万円の借金を金融業者に取り立てられるところから始まる。
借金を返せない人間の行く末がどうなるか……。命がけのギャンブルをしたり、地下の強制労働施設に送られたりというのはもちろんフィクションだが、限りなくこれに近い状況に置かれている人たちがたくさんいると聞いてぞっとした。
日本で「多重債務者」といわれる人は、およそ100万人いるという。この数字は、ここ数年の出生数とほぼ同じ。今や日本は、極端なことを言えば、「生まれた赤ん坊が全員多重債務者」になってしまうような国なのだ。
なぜ、こんなことが起こるのか。それは、私たちがじゅうぶんな「お金の知識」を身につけないままに社会に放り出されるからである。
「この世には、勝つ人だけが知っている残酷なルールがある」というのが本書の帯コピーだが、お金にまつわる不幸は世の中にあふれている。
そうした不幸は、ニュースで取り上げられ騒がれる。でも、詐欺事件も悪徳な金融業者も、世の中からはいっこうになくならない。それどころか「合法的に」お金を奪う仕組みさえ次々に生まれ続けている。
言うまでもなく、悪いのはお金を奪う側である。奪われた人は「悪く」はない。でも、お金を守る「責任」は一人一人にあるのだ。「知ろうとしなかったこと」に関しては、自分以外の誰も責任をとってはくれない。
私からお金を借りたままになっているあの人は今、どうしているんだろうか。マンガ好きだった友人の手がこの本に届いてくれることを祈りながら、「お金の本性を知らない」みなさんに本書をお薦めしたい。
サンマーク出版 TB編集部 岡田寛子
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