映画好き、町山好きはもちろん、普段あまり映画を観ない人にもおススメ。
※題名にも『トラウマ』とあるように、恐い話、グロイ話が苦手な人はやめておいが方がよいかも
ツイッター上でも発売当初から話題になり、初刷は書店からあっという間になくなった一冊。未だにアマゾンでは2~4週間待ち、かつ、中古の方が新品より高くなっているので、見つけたら迷わず手に取りましょう。
トラウマ映画館 (2011/03/25) 町山 智浩 |
題名にもある『トラウマ映画』とは、小さいころに意図せず観てしまってトラウマになっているのだが、マイナー過ぎて何というタイトルだったか大人になっても思い出せない映画のことである。”意図せず観てしまった”というのがポイントで、著者はこれらの映画を映画館で観ているわけではない。本書で紹介されている映画のタイトルを見て分かるとおり、そもそも劇場公開されていないものが多い。
そんな映画をどこで”意図せず”観たのかというと、テレビである。トラウマ映画というくらいなので、『タイタニック』や『世界の中心で愛を叫ぶ』のような内容ではないのだが、1962年生まれの著者が小学生から高校生だった1960年代後半から1970年代には普通に地上派で放映されていたようだ(さすがにキー局ではなかったようなので、岡山出身の水道橋博士は同世代だが全く観ていないそうだ)。そんな映画を著者は全部観ていたという。ほとんどではない、全部観ていたのだ。「またまた、大袈裟な」と思った人は、こちらの映画当てクイズをみて欲しい。どうやったらこんなことができるんだ!?
1982年生まれの私は本書で紹介されている映画は唯の1つも観たことがない。テレビ放映時は生まれていないし、日本どころかアメリカでもDVD化されていない作品も多いのだから、当然と言えば当然だ。全く観たことも聞いたこともない映画についての本の何が面白いのか、と思われる方もいるかもしれないが、これがたまらなく面白い。作品のあらすじ、映画作成の背景にあるアメリカの社会問題、監督や出演者たちの出自や葛藤など、紹介されている作品を観てみたくなるのはもちろん、その評論が単体でエンターテインメントになっている。未公開映画のときのように、ストリーミング放送やってくれれば、『悪い種子』と『ロリ・マドンナ戦争』は絶対に観る。
まだまだ新参者かもしれないが、コラムの花道時代からの町山ファンなので著者の父親エピソードは何度か聞いたことがあったが、母親に関するエピソードは本書が初めて。映画で残されたトラウマを解きほぐしていく中で、もっと大きなトラウマと向きあうことになる著者の姿には言葉が詰まる。
「でも、やるんだよ」
いつもの言葉を心の中で呟いていたのだろうか。