採点:★★★★☆
ユニクロ、柳井さんに興味がある人にはおススメ。他のユニクロ本より全然いいです。
本書にも紹介され通り、ユニクロ関連本はここ数年で数十冊は出ているが、新聞・雑誌記事の切り貼りだったり、単に決算数字並べて「やっぱり凄いよね。お終い」みたいな本が多かった。もちろん、柳井さん著の2冊一勝九敗 と成功は一日で捨て去れは面白かったが、外部視点でここまできっちりユニクロをっ解説した本は初めて。
ユニクロ症候群 (2010/07/30) 小島 健輔 |
■あらすじ
ファッションコンサルタントである著者が、ユニクロの成功要因、ビジネスモデルを現在のファッション市場を俯瞰しながらファクトベースで分析する。ユニクロがぶち上げた2020年5兆円の売り上げの実現性を徹底検証している。本書の副題から著者はアンチ・ユニクロではないかと思われるかもしれないが、そんなことは全くない。本書を読めばユニクロ、柳井さんの何が凄いかが明らかになる。
■感想
著者の辛口ブログは毎日チェックしているし、セミナーでも一度お話を聞かせていただいたことがある。パッと見は強面だが、その分析はかなり丁寧だ。大きな数字を基にしっかり自分の頭で考えるっていうのは基本だが、なかなか出来ることではない。
デフレの正体の藻谷氏はそもそもSY(数字読めない)が大半だと言っている。
ブランドに関するコンサルティングを生業としている自分にとっても非常に示唆に富んだ内容であった。今更ながらかもしれないが、ブランドのコンセプトとビジネスモデルは切っても切り離せないものだと痛感した。売れ筋を追いかけることで利益を出すビジネスモデルでは、一貫したブランドコンセプトの訴求などは不可能なのだ。広告宣伝部にブランディングをまかせっきりの会社は気をつけたほうがいい。
P.123ページにある広義のSPA分類図は非常に簡潔であり、現在のグローバルアパレル市場を読み解くキーチャートであろう。その他にも衣料品市場のスマイルカーブと自動車業界のスマイルカーブを比べたり、今後のユニクロが目指すべきモデルとしてサムスンの挙げるなど、グローバル水平化をキーワードに面白い切り口で解説をしている。
著者の言うところでは、既に古典的ビジネスモデルであるユニクロのSPAは本当の意味で第三世代SPAへと進化を遂げることが出来るだろうか。それとも、ジーユーが矢面に立てて、ユニクロは愚直に品質ブランドを貫き通すのか、本書を読んだ後はユニクロの未来を占いたくなる。
一点疑問なのが、副題の「退化する消費文明」という言葉だ。著者はデジタルに圧縮された音楽や衣類を消費する若者の感性を「退化」したと解説する。一方で、品質に拘る日本企業に対して、「品質神話」に振り回されるな、そんなものは消費者は求めていない、と渇を入れる。それなら、圧縮されてしまったアナログな部分も本当は価値のない「神話」に過ぎなかったのではないか。無駄をそぎ落とすことを「洗練」というのなら、我々の消費は「退化」していると言い切れるだろうか。