採点:★★★☆☆
官僚的組織に興味のある人にはおススメ。JALへ就職しようとしている就活生は必読
2010年学卒の就職希望ランキングでJALはなんと未だに16位(ソース)。世界の任天堂(70位)よりも全然上位にランクインしている。エントリーシート出す前に是非この本を読んで欲しいものだ。JALの誕生から悲惨な事故、組織の官僚化による内ゲバ、そして倒産までを追いかける。
腐った翼―JAL消滅への60年 (2010/06) 森 功 |
成毛眞さんはツイッターで本作を「失敗作」であり、おススメしないと仰っていた。その原因は本来「個人」にフォーカスすることを得意とする著者が、JALという「組織」に焦点を当てたためではなかいかとの考察。
確かに三菱東京UFJと同和の有力者の関係を描いた同和と銀行(現代プレミアブック)程のインパクトはない。全体として様々な事件やエピソードの羅列になっている感はいなめないが、JALが如何に異常な組織であった(ある)か、自然淘汰が働かない環境で人々はどう振舞うかを垣間見ることができた。
半官半民の国営企業としてスタートしたJALは、その設立当初から派閥争が宿命付けられていた。元役員の証言にもあるが、運輸省とのパイプ作りが経営陣の最も大事な役割であり、そもそもその経営陣も政府からの天下りが多くを占めるのである。これで顧客サービスに目が向くわけないよな・・・
規制業種であるためANAにも似たような性質があったようだが、国内の不動産投資がバブルによって巨額の負債に変わったときに、しっかりと膿を出すことができたようだ。ここで税金の投入や、負債の時価評価先送りなどで、淘汰圧から逃れていればANAもJALと同じ道をたどっていただろう。
JALの腐敗を示すエピソードが一々えげつなくて非常に面白かった。「気に入ったオネェちゃんをスチュワーデスにする」みたいなことが、ドラマの世界以外でも起こっているとは。しかも一件や二件ではなく、常態化していたっていうんだから開いた口が塞がらない。
たとえば気に入った飲み屋の女の子をスチュワーデスとして、会社に押し込んだことも一、二度あります。入社試験といっても、そこはかなりゲタをはかせてくれます。要は少々試験の成績が悪くても、身長が高く、容姿端麗であればいい。実は、赤坂のキャバクラで知り合った女子大生がいましてね。その娘もいれてもらいました
うーん、絵に描いた様な下衆だ。こういったオジサン達の年金のために我々の税金が使われているとは。。。
その他にもJAS社員へのイジメやクーデター、更には怪文書まで飛び交うのである。こういった週刊誌的ネタが好きなひとにはたまらないだろう。新聞記者と経営陣の関係にも触れられているが、日本のジャーナリズムは・・・
アゴラで金融日記の藤沢数希さんも描いているが(記事はこちら)、競争って本当に大事である。一定のルールに則って闘って、敗れたものは滅びるた方が良い。いや、滅びなければならない。滅びるべきものが生き延びるということは、生き延びるべき者がその負債を肩代わりしていることになるのだから。