世の中には不愉快なことがゴマンとあります。
いきなりすみません。でも、政治家は信用ならないし、尖閣問題は解決しないし、格差社会だし、ダイエットがうまくいかないし、恋人や配偶者の言動も納得いかないし……。
これ、私の個人的な悩みではありません(一部はそうですが)。本書が取り扱うさまざまな「不愉快」の一例です。
本書をジャンルづけすれば“社会批評集”といったところですが、著者の橘玲さんは政治や経済から個人の生活に至るまで、さまざまな「不愉快」の解決策を提示……してはくれません。それどころか、「だって○○だからしょうがないじゃん」という理由をズバズバ述べていきます。
なんだか後ろ向きに聞こえるかもしれませんが、どっこい、読み始めるとこれがすっごく気持ちいい! 考えてみれば、「不愉快」のほとんどは「なんでこうなるんだ、バカヤロー!」とか思うから不愉快なのであって、「しょうがない理由」がわかると、不思議なほど落ち着きます。「原発」「生活保護」「いじめ」などのシリアスなテーマも、橘さん独特の簡潔明瞭な(時には身もフタもない)筆致で、本当に読みやすくまとまっています。
本書の議論のベースになっているのは、実は「進化論」です。サイエンス好きのHONZユーザーの皆様には説明無用かもしれませんが、現代の進化論は、脳科学や遺伝学、ゲーム理論、行動経済学などの学問と複雑に結びついた刺激的な分野です。これを社会批評に当てはめてみたら、いろんな「不愉快」の理由も解明できてしまった、というわけです。
最後になりましたが、本書の表紙にはあの『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造氏にご登場いただきました。「僕の本を読んだ人から、ときどき『笑ゥせぇるすまん』を思い出すと言われる」という橘さんと、奇跡の初コラボ。帯には推薦コメントもいただいているので、ぜひご覧になってみてください。
集英社 星野晋平
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。