史上最多の米機密文書がウィキリークスと欧米マスメディア連合によって2010年末に一斉公表された。世界180ヶ国にある約280の大使館・領事館で書かれた合計25万通に及ぶアメリカ国務省の内部文書だ。質の高い文書の中には、ウォッカに煽られたディナーや、独裁者の会合、サウジアラビアのセックス・パーティーの描写まであり、世界を震撼させた。チュニジアの米大使の文書(同国の支配者一族の腐敗や目に余る言動について激しく非難)は、言論統制されたチュニジア国内に一気に広がり、何万人という抗議者を立ち上がらせ、ついには政権指導者を失脚させるまでに至った。「ジャスミン革命」である。
ウィキリークスと欧米マスメディア連合は、2010年夏・秋ごろにもアフガニスタン戦争やイラク戦争の機密文書・データを公開している。その一つはイラクのバグダッドで米軍ヘリコプターが、ロイターの社員2人を含む民間人12名をまるでビデオゲームのように射殺する動画で、この公表によって米軍に対する信頼はガタ落ちした。(http://bit.ly/bIUOvp)
本書は、ウィキリークスがこのような情報をどのように手に入れたのか、ウィキリークスの創設者はどのような人物なのか等の疑問に迫る一冊だ。バグダッドで勤務する米軍兵ブラッドリー・マニング(当時22歳)は、計200万件にも及ぶ文書やデータを米軍ネットワークから見つけ、ウィキリークス創設者であるアサンジに渡した(マニングは現在米軍基地内の約4畳の独房に1日23時間拘束されている)。オーストラリア出身の天才にして奇人ハッカーであるアサンジは、その情報を自身のウィキリークスHPと米ニューヨークタイムズ紙や英ガーディアン紙と一緒に公開。米政府からは「テロリスト」と呼ばれるまで敵対視された。そんな矢先、自身のファンであった女性と性的な関係を持ち、女性から訴えられ逮捕。まるで映画をみているかのようなドラマチックなストーリー展開で、目が離せない(スピルバーグ監督は本書を映画化すると発表)。
本書のあとがきにあるようにウィキリークスのストーリはまだ始まったに過ぎない。今後、ウィキリークスの公表が与える国際政治経済への影響、米国の軍産複合体vs欧米マスメディアの戦い、シェルなど大手石油企業を含む民間企業の対応からも目が離せない。
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