『ハーバード白熱日本史教室』が7.5万部を超えるベストセラーとなった北川智子さんの最新刊。彼女が海外で学んだ経験をまとめた本である。勉強法というタイトルではあるが、すぐに使えるようなスキルよりも、HONZ読者のように、本を読むことで知や教養を得ることが楽しくてしょうがないといった人たちが読んで共感できるような内容である。いや、それだけではない、もしかするとあなたの中の勉強という概念がひっくり返るかもしれない。事実、自分の中では学ぶということについての考え方が、この本を読んで大きく変わってしまった。
彼女の経歴はとても不可思議でおもしろい。高校生のときにカナダへの短期語学留学したことがきっかけで、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に入学。このとき彼女はTOEFLの点数が全く足りなく、ホームステイ先で勉強をはじめたが、途中ですっぱりとそれをやめてしまう。代わりにホームステイ先で家族と会話をし、子供に絵本の読み聞かせをした。それが結果として英語の学習となり、無事大学に合格。無理して勉強をするより、現地に馴染むことを意識したほうが英語の勉強はうまくいくらしい。
大学では数学と生命科学を専攻。同大学院ではアジア研究の修士課程を修了。って専攻は理系で修士は文系って、大学ではこういうのよくあるのかな?さらに、プリンストン大学では日本中世史と、中世数学史で博士号を取得。卒業後はハーバード大学でカッレッジフェローとして、3年間教鞭をとり、現在はケンブリッジニーダム研究所に籍をおいている。
カナダ→アメリカ→イギリスと本当に素晴らしいキャリアの持ち主だと思う。彼女の勉強に関して気になるのが、文系と理系といった概念がまったくもってないことである。自分が学びたいと思ったものを学んでいる。文系、理系という枠は本来考える必要がないのかもしれない。というか、これこそが正しい学び方なのかもしれない。
“時を重ねても、自分の中に残ること、それが勉強の成果であり、自分を形づくるすべてなのだ。”
“そもそも勉強とは、基本的に自分のできることを伸ばしていくためのものである。できないことを無理して引っ張り上げようとするのは、ジャンプが得意でない人にバレーのアタッカーを任せたり、背が低い人にバスケットでダンクシュートをさせたりしようと考えるのと同じだ”
どちらも本文から引いた言葉である。学ぶということに関して、自分は固定観念に囚われすぎていたのかもしれない。好きこそものの上手なれではないが、勉強というものはやりたいことをやりたいようにやればいいのではないか?この本を読むとそんな気がしてくる。そういえばHONZの代表である成毛眞も『勉強上手』の中で同様の主張をしていた。努力が必要な勉強など本当は必要ない。自分の好きなこと得意なことをやっていれば、努力は必要ない。たしかそのようなことを言っていたはずだ。
勉強というものは自分の好きな事や、興味のあることを好きなように、やっていくのが一番なのではないだろうか?本著では彼女の学習法もいくつか紹介されていたが、それらは自分の能力ではマネできそうもなかった。しかし彼女の勉強というものについての考え方にはとても共感ができるし、こういう考え方であれば、勉強というものはもっと楽しくできるようになるはずだ。
最期にこの本で一番好きな部分を引用してレビューを終えることにする。
“すべての物事の根底にあるものは、損得ではなくて「どれだけ自分らしいか」だと言う。(中略)そういう価値観で物事を見ていくと、だいたいの問題は解決する。そして、勉強は特別にそうとも言える。今格闘していることが、自分のためかどうか。自分のためでなければ、学べない。学んだふりに終わる。
何事も、自分らしいスタンスでいくと、どんな選択をしても後悔しない。だから自分らしくあることにこだわるのは、最重要、最優先すべきことである”
ハーバードで教鞭をとることになった経緯と、そこで教えていた「レディ・サムライ」という講義について書かれた本。こんなふうに日本史を教えてもらったら、もっと日本史が好きになっていたと思う。
代表の勉強法本。無理をして、どうにかして学ぶ勉強ではなく、好きな事をして特技を伸ばす学習法。私はこの本から影響を受けまくっている。