『こんなにちがう中国各省気質』日中摩擦本に食傷気味のあなたへ

2013年1月31日 印刷向け表示
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こんなにちがう中国各省気質

作者:高橋 基人
出版社:草思社
発売日:2013-01-22
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いわゆる県民気質本だ。青森県人は口が重いのでいつも両手で支えているとか、大阪人にボケツッコミを禁止すると呼吸困難で死んでしまうとか、日本海側の府県では美人県がひとつおきに現れるとかいう、あれだ。当たらずとも遠からじ。たしかに秋田県と新潟県には美人が多いが、その2県に挟まれた山形県には・・・おっと、それはともかく本書は中国31地域の気質、簡単な歴史と経済、著名人やご当地料理などをまとめた本だ。

文章は歯切れよく、曖昧にことを誤摩化すことがないので、気持ちがよい。少し引用してみよう。まずは世界の工場といわれる広東省だ。日本の国土の半分の面積に1億人が暮らすことや、客家の歴史などを概観したうえで

ちなみに、19世紀、中国に渡ってきた西洋の宣教師たちは、広東人の印象について「小柄で痩せていて、姿形が醜く、ずる賢く、不潔で、バクチが好きで、内輪もめが絶えず、臆病で、食い物に卑しい」と記している。

と、ひとまず広東人が目尻を釣り上げるような文章を引用し、改行せずに続けて

ひどい言われようだが、実際のところ、広東人の体つきは小さく、頬骨が突き出していて、目はくぼんでいる。鼻はあぐらをかいていて唇は厚い。外見については、それほどデタラメでもない。

な、なんと、著者はさらに念には念を入れてしまうのである。各章(各省)の扉には簡単なまとめがついている。広東省のまとめはこうだ。

広東ルーツの華僑は世界中に数千万。頭の回転が速く、冒険心にあふれる人々は自国中国をまるで信用せず、利益第一主義。バクチ好き、迷信好きで、ゲテモノが好物。民度が低く、都市の治安は最悪

褒めるのかと思ったら、いきなり手厳しい。広西チワン族自治区のそれは

美男子率、美女率は中国で最低レベル?野心家も大人物も忘れた頃にしか現れない。世界遺産「桂林」を擁し、標準語がまったく通じない片田舎なのにオートバイの普及率は全国1位。

と、これまたスゴい。もちろん褒められている省もある。たとえば寧夏回族自治区。

共産中国でもかたくなに信仰を守り、伝統的な生活習慣を守り続ける情に厚く、正義感の強い人々。宗教上の理由で豚肉もラードもタブー。食卓には羊肉の料理がならぶ。

新疆ウイグル自治区も

民族独立運動がくすぶる「中国の火薬庫」広大な砂漠の地に暮らす気さくな人々はいったん友人になったら、とことんもてなす。発展著しい区都ウルムチには大阪の「辰野」の高級ファッション専門店街。

と、評価が高い。中原を厳しく見て、西部を持ち上げる傾向があるのかと思われるかもしれないが、15年ほど前に寧夏回族自治区や新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区などを旅行した程度のつたない経験でも、まったく同じ印象をもっている。やはり、当たらずとも遠からずだ。

本文では中国のなかで云われている県民性ジョークも多数紹介されている。たとえば、山西省人はケチなので九毛九とバカにされているという。九毛九とは0.99元だ。水に落ちた泳げない山西省人が助け賃を0.01元値切って溺れてしまったというジョークである。値切る方も値切るほうだが、助け賃をとるほうもとるほうで、いかにも中国らしいのがミソだ。

奥付によれば著者は空調システムのダイキン工業で北京首席代表などを務めたビジネスマンだ。おそらく中国各地を飛び回り、各省気質を実際に見聞きするだけでなく、他省で悪口やジョークなどを聞き集めたのであろう。各省の簡単なまとめやご当地料理などについても適切で、編集者のセンスを感じることができる好著だ。

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作者:フランク・ディケーター
出版社:草思社
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