タイトルは重いが、装丁は緩い。裏面は、牛乳1ℓの紙パックのイラスト。どんなに考えても、それに意味を見出せない。本の中身も外見の期待を裏切らない。
2009年にウェブメディアの連載企画として、スタートしたものの、連載とギリギリ言える回数の2回で終わってしまった。ユルい。その後、著者とその周囲の共有の友人が亡くなったことをきっかけに連載が再スタート。この本に至る。
登場する11人は、名前だけ聞いたことがあるけど、どんな人かわからない、そもそも聞いたこともない、少なくとも、1983年生まれからはそう思ってしまう。一方、1974年生まれの著者にとっては、「今の時代の大きな一角を代表している同世代人」になる。確かに、作品を並べてみると代表しているかどうかは別として、世に広く知られ始めているものが多い。
漫画・映画なら『モテキ!』『闇金ウシジマくん』、書籍であれば、新井がレビューしている『日本2.0 思想地図β vol.3』や『ノンフィクション新世紀』、シェアハウスで有名なギークハウスなどなど。少なくとも、僕にとっては気になるアウトプットをしている少し先輩方の話を聞くイメージだ。
11人個性はそれぞれで、インタビューの長さはバラバラ、結論も終わり方もバラバラである。トークは流れに流れ、脱線し、緩やかに進んでいく。唯一の同じ形式は最初の質問が「何歳ぐらいまでいきたいと思っています?」ということ。問いの重さに反比例して、肩肘張らずに、読める内容で、手を止めことができず、のめり込んでしまう。一方で、読後にまっすぐで大胆な問いの影響で、自分の死生観に、小さくはないダメージを受ける。
元首相が死について迂闊な発言をされていたが、それに勝るとも劣らず、死生観について大胆な考えがひけらかされている。11人全員が他人の死の話からスタートするのではなく、自分ごとの死として考えているが故、地に足がついた考えばかり。自分がふらふらと非日常的に考えていた死ぬことについての考えを、上下左右に揺さぶってくれる。そして、社会に発信している作品と、著者の発言のギャップが魅力的で、改めてインタビュイーの作品を読んでみようと思えてくる。
死について達観して、脱力系な方々は、
「明日死んでよかったら、今日もう仕事しなくていいし(笑)」雨宮まみ
「死にたくはないし、できるだけ生きようとはするんですけど、どうせいつか死ぬんだったら一緒かな」Pha
「いきなり死ぬ」とか「無意味に突然終わる」みたいなことばっかり考えてるところがある 東浩紀
いっぽうで、生きることに執着する肉食系のものも、
私みたいに「死ぬのが怖いから、もっとこうしたい、ああしたい」みたいに言ってる人、本当に会ったことがないんですよ。世代なのかなあ…。 久保ミツロウ
やっぱり、100歳くらいまでは生きなきゃ、もったいないな、と。 向井秀徳
しっかりとタイトルの質問に答えを持っている人も、
僕、自分の日記のプロフィールに、死ぬとき書いてるんですよ。 金子平民
僕は、はっきりしています。60。というか60以上はあまり生きたくない。 渋谷慶一郎
本書のなかで1人だけ、震災を挟んで、インタビューされた人がいて、死生観の変化も目の当たりにできる。震災前後で考えが変わった人、変わらなかった人、子どもが生まれて変わった人、身近な友人の死、肉親の死がきっかけで変わった人がいる。きっかけの大小関わらず、考えは変わるようだ。他の10名にも、5年後、10年後に同じ質問に答えたとき、どう変わっているのだろうか。
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寿命が1000年!という話になったら、すべてが覆されそうで、恐ろしい。気になる方は、内藤順のレビューを。
科学の力で、2100年までには老化のメカニズムが解明されて、寿命は150歳を優に超えるであろうと予測されている。成毛眞のレビューはこちら。