『くじけないで』の販売数が150万部を突破したという。素晴らしい詩集だ。時代を超越した魅力がある。こんなに新作の詩集が売れる国が他にあるのだろうか。万葉集の太古から、日本は詩歌の国なのである。
しかし、生まれつきの天邪鬼なので、別の歌集を紹介しよう。著者は京都在住の75歳の女性である。柴田トヨさんから見ると娘のような年回りということになるが、当然お目は老眼である。
ビューラーも如何ですかと勧められ
老眼鏡(ろんがん)掛けなきゃ挟めないよ
当然、伴侶も高齢である
往かないでお願いだから逝かないで
あと半月で保険が倍に
子供や孫も成人になっている
這えば立て立てば歩めの親心
知るや知らずやヤンキー座り
社会にもたまには皮肉を言う
和を以って貴しとなす聖徳太子
これも過ぎれば群れなすメダカ
京都人ですから
天皇さん一寸東へ行ってはる
一寸が過ぎて百四十年
「亡き我が背の君に」と付して
老いたとて枯れ果てたとてこの想い
熱き血たぎり乙女のままに
本書は万人にお勧めというわけではない。戯れ歌と京都が好きな人にとっての一冊。