『日本人へ』を読む必要があって駅前の書店にいったら、面白そうな新書がちらちら出ていた。
『日本人へ』
塩野七生が文藝春秋に連載しているエッセイである。『リーダー篇』128頁の「気が重い!」で考え込んでしまった。「(『ローマ人の物語』が完結するという)先が見えたとたんに襲ってきた恐怖」があったという。さらに、イチローも同じことを語っていたと塩野はいう。自分で何らかのゴールを決めた人が、そのゴールを目前にしたときの感覚だろうか。2人の達人にしか判らない感覚なのかもしれないが、想像できなくもない。先頭をたった1人で走る人を尊敬する。
『なぜ人は砂漠で溺死するか』
1967年生まれの法医学者の書き下ろしである。不審遺体の解剖数は日本で1、2を争うという。本書はある意味で、新書の鏡である。パラパラとめくりながら、どんどん読んでいける。意外や意外の連続で、日常生活のためにもなる。掘り出しものだった。どこかの雑誌で書評にしてみよう。
『事情のある国の切手ほど面白い』
読む前から想像ができるテーマだ。金正日が白頭山でナポレオンを気取っている構図などがすぐにでも頭に浮かぶ。ところが、南野洋子の切手を外国が発行する理由や、ベルギーの切手には食べ物が多い理由など、意外性のある内容もあるようだ。ちなみにベルギーの切手は英語表記だ。フランデレンとワロンが対立しているからだという。このたぐいの本は電子版のほうがよいかもしれない。フランデレンとワロンなどは読みながらググりたいし、図版はカラーで見たい。
『知っておきたいアメリカ意外史』
多くのアメリカ人にとっては常識だが、多くの日本人は知らない12の常識を紹介するという。著者は阪大の歴史学者だ。「独立宣言はイギリス国王への悪口が目的」「4600万人の無保険者がいた不思議」「ヴェトナム戦争の遠因は日本占領にあった」など、タイトルはこれ見よがしなのだが、中身はそれぞれに要領よくまとまっているようだ。
『街場のメディア論』
メディア論やIT論などは、移ろいやすい一過性のテーマの代表選手である。かなりいい加減に書いても、業界関係者という読み手が多いので売れる。現実が先行して、本はすぐに陳腐化するので、錯誤があっても後に言い訳しやすい。読者の共感を得ることこそが、書き手の手腕の見せ所だ。で、本書にはなんとなく共感しそうな部分も多そうなので買ったまでだ。
『江戸の気分』
堀井憲一郎って、週刊文春の「ホリイのずんずん調査」だよね、などとブツブツ言いながら買ってみた。パッと開いてみたら「無礼打ち」。元禄時代に酔っぱらいがお侍に絡み「この、へちまの皮、フンドシで金玉踏んで、死んでしまえ」と毒づいた。さらにしがみついてきたので刀で払ったが切れず、うち殺した。まるで落語だ。ホリイのエッセイ、こんなに面白かったのだ。さっそく、既刊を2点注文した。
『臓器は若返る』
福岡伸一のおすすめである。帯にはさらに「いま、時間とミトコンドリアのあいだに隠された生命の秘密が解き明かされる!」とある。著者は慶応医学部教授。無条件で買ってしまった。目次を見るかぎり、結論は適度なカロリー摂取と運動ということになりそうだ。結論は当たり前すぎるのだが、完全に科学的に説明されて始めて、納得して実行するタイプだから、この本はじつにありがたい。たぶん、おそらく、明日か明後日には運動するであろう。