週刊「東洋経済」が2月6日特大号で読み応えのある特集をしている。「2020年の世界と日本」だ。社内記者による週刊「エコノミスト」のような記事づくりが成功しつづけているようだ。面白そうなので、記事のいちいちにコメントしてみる。
「5人の賢人が描く2020年」というサブ特集ではジョージ・フリードマン、エズラ・ボーゲル、大前研一、金燦栄、中西輝政の5人が登場する。
フリードマンはかなり怪しい。21世紀は米国の時代となり、その繁栄はこれからだというのだ。しかし、アメリカ国内の富のピラミッドが世界のそれと相似形になる日が近いことは自明だ。これはもう無視できない不安要素だ。知識もいいかげんで、日本はわずかな時間で核兵器を作れると思っているらしい。しかし、万が一GOがでても、最低10年はかかるというのが常識だろう。そして、2050年には日本がアメリカの唯一の対立軸になるという。ゴホゴホ。
ボーゲルは現実主義者だ。「(中国政府が)総合的によい結果を生み出し続けていれば、たとえ真の民主主義が実現しなくても、(中国)国民は指導部や体制を喜んで受け入れる」という。ポール・コリアーが『民主主義がアフリカ経済を殺す』で、先進国は良い結果のためにはクーデターをも支援するべきだとしていることを思い出す。またボーゲルはG2の可能性を否定する。その通りだと思う。中国はG2の責任を負うつもりなど全くないはずだ。
大前は歴史家だ。大前節のあと、2050年の日本は10%国家で良いと結ぶ。つまり現在のアメリカに対するカナダ、ドイツに対するスイスやデンマークなどになれば良いという。完全の同意するものだ。良い意味でも悪い意味でも、日本は文化的に閉鎖的な国であるべきだ。大前さんはクラリネットを尺八に持ち変える時期にきたかもしれない。
金は中国の可能性だ。冷静に中国はアメリカとは対立しない理由を分析し、将来の懸念として中国のラテンアメリカ化をあげ、5つの現代中国イデオリギーを紹介している。こんな冷静な学者がいることこそ、中国の成長が安定的に継続することを信じるに足る理由だ。しかし、中国が期待するアメリカのリーダーシップとは、イスラム諸国にケンカを仕掛けてツケを同盟国にまわして疲弊させ、第3世界に民主化を押し付けては中国にとっておあつらえ向きの合法的独裁政権を作りだし、安ものをひたすら買い続ける貧者を国内で増殖するアメリカのことだと思う。
中西はひとり1.5ページを使う。他の4本と比較して冗長で重複だらけだ。中西はアメリカが台湾に武器輸出したことをもって、中国に本気で対峙しはじめたとみる。しかし、ボクはホワイトハウスが軍産複合体のコントリールを失ったと見るべきだと思う。逆に中国はオバマが対話の相手として意味があるのかどうかと懸念しはじめたのではないか。ヒラリーの「グーグル関連批判」も民主党の政治資金絡みだろう。中国によるサイバー攻撃など、NSAのエシュロンに比べれば児戯に等しい。
次のページはCIAが2008年に出版した『グリーバル・トレンズ2025』の紹介だ。4つのシナリオとも「???」が頭上に点灯してしまう。ただ1つ完全に的中しそうなのは、日本の政治はマヒに陥るという予測だ。