常々、日本人の9割に英語はいらないと言ってきた。9割の国民は数年に1回行くかどうかの海外旅行以外で英語を使う機会はない。自分自身、12年前にマイクロソフトを退職したあとは、海外への観光旅行以外で英語を使ったことはない。英語が必要なのは都心のホテルマン、外資系社員の一部、商社マンやメーカーの海外担当者などじつはごく一部である。これに留学経験者や英語教師を加えても1割の1300万人に達しないはずだ。
もし、日本人の10人に1人が英語を話すことができるならば、小学生や高齢者、地方公務員や自衛官、土木建築作業員やコンビニ店員、新聞記者や銀行員、主婦や英語以外の学校教師も10人に1人は英語がペラペラということになる。じっさいはそのようなことはない。このような内需系の職業につく人々が職業的に英語を使う機会はほとんどない。そこで彼らを除外してみると、すくなくとも残りの日本人の3人に1人は英語がペラペラでなければ、日本人の1割が英語を話せるということにはならないなずなのだ。じつのところ日本人の1割が英語を話すことすら非現実的なのだ。
それでもなお、英語を話したい人は学校の授業以外に2000時間ほど英語に接すると、いつのまにか聞いて話せるようになるはずだ。このことは多くの外資系経験者や留学経験者が感覚的に理解しているはず。ある日突然話せるようになるのだ。どの国でも3歳児になると文法も教えられていないのにそれなりの母国語を話せるようになる。この乳児期に言語に接しているのは3000時間ほどだ。いっぽうで、中学・高校の英語の授業は合計900時間ほどでしかない。つまり学習時間が圧倒的に少ないのだ。もし、英語を勉強するならば、この追加の2000時間で何をするかが重要なのだ。
研究者や専門家は、その分野の論文を読み、学会で揉まれているうちに英語が上手くなるはずだ。いっぽうで一般人はまさに一般的なことを話したいはずだ。それには学校で教えてくれる語彙数が圧倒的に少ないのである。発音もましてや文法もあとまわしで良い。しかし、単語を知らないとじつは非常に厄介なのだ。それでは、以下の単語を知っているかどうかを試してみよう。
宿題 日直 避難訓練 土足禁止 分子と分母
四捨五入 ひし形 アルカリ性 肉食動物
雪崩 立候補 けんすい 画鋲 ト音記号
いくつ回答できたであろうか。これらはすべて小学校でつかう日本語である。じつは日本人のほとんどがこの程度の単語を知らないのだ。それこそが問題だ。ましてや水虫、口内炎、腱鞘炎などの日常的な病気、樹木や花の名前、英語(中国語)表記の中国の政治家の名前、土木建築・編集用語などの職業用語などまったくお手上げなのである。とりあえず、気を取り直して小学生の言葉から勉強しようと思うのならば、本書が最適である。なんと500円。お買い得だ。ちなみに「さなぎ」はpupa、「えら」はgill、「幼虫」はlarvaというのだそうだ。知らなかった。
初心に戻る度 ☆☆☆☆☆
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我田引水の拙著はこちら。