2冊とも考えようによっては安い本だ。豪華な装丁でフルカラー、『天才の仕事』は238ページで2300円、『ロボット』は359ページもあって3500円だ。2冊とも中心となるのはCGによるダヴィンチの発明の再現だ。
ダ・ヴィンチは数万ページの手稿(CODEX)を書いていたといわれ、現在までに8000ページほどが発見され、保存されている。もっとも有名なのはアトランティコ手稿で67cmX45cmで1200ページだ。ビル・ゲイツが保有しているのはレスター手稿である。
『天才の仕事』には各手稿の中からカテゴリー別に選び出し、CGで再現したメカニズムがフルカラーで掲載されている。最初のカテゴリーは「空を飛ぶ機械」で、昔の全日空の尾翼マークに描かれていた空気スクリューなどが取り上げられている。以降は「武器」「水にまつわる機械」「作業のための機械」「式典の機械」「楽器」「その他の機械」に分類されている。
一覧してダヴィンチの実現を前提とした科学的合理性に驚かされる。回転式大砲では発射後に空中で炸裂し、多数の小爆弾を散乱させるアイディアを提示しているのだが、その小爆弾を6個づつまとめておくための金具まで設計している。
外輪船、カタマランの浚渫船、船を通すために旋回する橋などはいまでも良く目にする。もし、ダヴィンチにエンジンなどの動力源を渡していたら、ヨーロッパはルネッサンスから一気に近代に入ってしまったであろう。
CGの色調とデザインはいかにもイタリア的で美しい。組み上げられた機械とそれに使われる部品を同一面に描いていているので判りやすい。機械の動きかたを示す矢印の色と形にも工夫がほどこされていて、美しく感じるほどだ。
いっぽう『ダ・ヴィンチが発明したロボット』は文字通りロボットをCGで再現した本だ。本書ではまずダ・ヴィンチが設計している基礎的なメカニズムを再現する。継ぎ手、コネクティング・ロッド、フライホイール、ベアリングは基本中の基本だ。続いてジンバル、交互運動装置などより複雑になり、つづいて各種の自動走行車など完成品がでてくる。
その後、機械仕掛けのライオンがあらわれる。自動走行車やライオンはCGだけでなく、木製模型としても実際にも再現されている。模型屋さんで売っていたら間違いなく買うであろう。本書は単なるメカニズムの再現だけでは終わらない。手稿をハイパーテキストとして読むという提案やアンティキテラのような歯車世界へと読者を導いたあと、最後にロボット兵士を実際に再現してしまうのだ。
2冊を読んでつくづく思うのはイタリア人のメカ好き、工芸の才能、デザイン志向はダ・ヴィンチのころから連綿と続いているのではないかということだ。それを読んで喜んでいる日本人も相当なものだと思う。
著者の公式サイトを眺めるだけでも面白いと思う。動画はなぜか日本版だ。
www.leonardo3.net