家入一真をご存知だろうか?レンタルサーバーのロリポップ!などを手がけるpaperboy&co.(以下ペパボ)の創業者であり、JASDAQの史上最年少上場社長である。
その彼が高校中退、ひきこもりといった過去を赤裸々に告白し、『こんな僕でも社長になれた』と宣言する本著作は、暗い過去を持つたくさんの人に勇気と希望を与えるに違いない。
彼を救ったのは山田かまちの絵と文章だった。
臆病になる余り、心の中で幸福を望み、誰かと愛し合うことを望む、そんな当たり前のことからも逃げていた。いつしかそんな願いが存在していたことすら、忘れてしまっていたのだ。
けれども山田かまちという人は、生涯を通して、ひたすら迷いなくそれを求め続けていた。
愛したい。
生きたい。
幸せになりたい。
自由になりたい。
そんな彼の言葉に触れたことで、僕と同様、それまでずっと薄暗い押入れの中においやられていた僕自身の本質的な情熱……あるがままの自分を望み、幸福を望む強い感情が、否が応にも湧き上がるのを感じた。
高校を中退し、ひきこもり状態だった彼は、母親に連れられてみた山田かまちの展覧会で大きな刺激を受け再起をはかる。新聞奨学生として、新聞配達でお金を稼ぎながら、大検をとり、美大の予備校に通いはじめる。
しかし彼が美大を受験することはなかった。その理由があまりにもバカバカしく、「阿呆か!」とつい本にツッコんでしまったのだが「事実は小説より奇なり」を地で行く男、それが家入一真である。
その理由とはなにか。1年目はセンター試験の受験を申込忘れたというもの。そんな事ってあるのか?それだけではない。浪人して、翌年、今度は試験会場である東京に行ったものの、眠れないからといって、夜中に町中を歩き回ったことが原因で試験当日に大寝坊。試験を受けられなかった。っていったいどんな人生なんだよ!
さらには「ご近所をさがせ!」というサイトで知り合った女子高生とメール友達となり、それがきっかけで結婚。すぐに子供ができて、そばに居たいという理由から、会社をやめレンタルサーバー事業のロリポップ!を起業する。これを破天荒と呼ばずしてなんと呼ぶのだ。ハチャメチャすぎる。
人によっては莫迦にしているのか?と怒り出す人がいてもおかしくはない。けれど彼は至って大真面目なのだ。彼の行動原理は展覧会でみた山田かまちの詩にあるのだろう。
愛したい。
生きたい。
幸せになりたい。
自由になりたい。
誰しもが望むことだが、外的な要因から、これをまっすぐに追い求めると、方々から叩かれることが必死なのが今の世の中である。正直なところ、こういう人には生きにくい世の中だと思う。自分も普通って何?とかいうような、ひねくれた人間なので、彼の行動や考え方というものにはものすごく共感できるし、羨ましいとさえ思った。
そんな彼が発しているメッセージはただひとつ。
逃げることは、決して悪いことじゃない。前に進めなくて立ち止まるくらいなら、全力で後ろ向きに走ればいい。尻尾を巻いて逃げてしまえばいいのだ。
イジメ問題などが取り出されているが、こういったことを表立っていう人は少ない。だからこそ、こういう人は貴重だと思う。『こんな僕でも社長になれた』これを読んでぜひ逃げる勇気を手に入れてもらいたい。
最後に関連書を2つ紹介
逃げろ!という家入一真のメッセージがよりこめられた1冊。
家入一真の人生を変えた山田かまちの作品集