2011年7月15日のHONZサイトオープンから8ヶ月が経過しました。おかげさまで、順調にアクセス数も伸びており、TwitterやFacebookではHONZ読者の皆様から積読本による自宅スペースの圧迫、書籍代の増加に関する苦情を頂くことも多くなってきました。同じ悩みを抱えるレビュアーの1人としては、同士の増殖を心より嬉しく思っております。今後もおすすめ本レビューを中心に、様々な仕掛けを行っていく予定なので、これからもどうぞHONZをご贔屓に。
さて、毎日無慈悲におススメ本を紹介し続けるHONZですが、書き手の多くは、レビュアープロフィールにもあるように、いわゆる普通のサラリーマンです。各々が仕事の合間を縫って書店に通い、貪るように本を読み、夜な夜なレビューを書いています(読書の合間に仕事をしているのでは?と疑いの目を向けたくなる程の読書量のメンバーもいますが)。今回は、いつものおすすめ本レビューとは趣向を変えて、HONZ活動記としてその裏側を少しだけお伝えします。
この活動は基本的に無給で行っています。
それでも、どれほどの時間とエネルギーを費やしたのかと驚かされるレビューを書いてくるメンバーがいます。指定された日以外にもばんばんレビューをアップするメンバーもいます。人気の本をいち早くレビューして恨みを買っているメンバーももちろんいます。
月に一度行われる朝会は午前7時に集合です。
それでも、前日の仕事が早朝まで及んで強烈な眠気に襲われているはずのメンバーも嬉々として大量の本を抱えて早朝の六本木にやってきます(この記事を書くために色々振り返っていると、栗下直也が第3回の朝会を二日酔いによる寝坊のために欠席したことを思い出しました。さすが昭和の酔っ払いと言ったところでしょうか)。山奥から2時間以上かけてやってきているメンバー、遠隔地からSkypeで参加しているメンバーもいます。今月読む本の紹介が行われる朝会は真剣勝負であり、きっちりネタを仕込んで臨むメンバーもいるほどです。
それでも文句を言うレビュアーは1人もいません。皆が大いに楽しみながらこの活動に取り組んでいます。今回のこの記事はHONZ内部の熱気やメンバーが面白がってやっている活動をもっと知って貰いたいと思って書いています。面白い本を読んだら紹介せずにはいられない我々は、この活動の面白さも紹介せずにはいられません。
では、何がそんなに楽しいのかと言いますと、その理由は大きく2つあるのではないかと考えています。
1. 数少ない、同じ興味を持つ人間が集まっている
書店に行って見ればすぐに分かると思いますが、大型書店を除くとノンフィクション本のコーナーはそれほど大きくありません。そもそもノンフィクションをジャンルにとらわれず月に何冊、何十冊も読んでいる人などあまりいないということです。HONZに参加するまでは、興奮しながら読んだ本を周囲に説明してもポカンとされて寂しい思いをしていたメンバーが、自分の知らない本をぽんぽんと紹介してくれる人に出会えた喜びは計り知れないものでした。「ソウルメイトに出会えた・・・」とつぶやいていたメンバーがいたとか、いなかったとか。
まぁ、とにかく癖の強いメンバーが多いので、普通が服を着て歩いているような私などは、酒を酌み交わしながらその突飛な人生経験を聞くだけでも面白いのです。きっと、学生時代から“変わり者”扱いされていたことは間違いないでしょう。編集長の土屋敦などはそのプロフィールを読むだけで、何だかヤバイ感じ(もちろん良い意味で)がビンビン伝わってきます。
2. 定型フォーマットの上でアウトプットを出し続けている
ただただ周りに理解されることの少ない自分の楽しみを語り合えるメンバーが集まるというだけでは、いわゆる同好会や勉強会と変わらないでしょう。アウトプットによって繋がるということこそがHONZらしさを作っており、新しいコ・ワーキング、組織の形態を模索するヒントになっているような気がします。
基本的には朝会・夜会の月2回しか顔を合わせることはないのですが、毎日更新されるアウトプット(レビュー)を見ることができるので、早い時期からお互いを旧知の友人のように感じることができましたし、刺激しあうことができました。勉強のための勉強や趣味の語らいだけでは、メンバーもこれほど熱は入らなかったでしょう。記事の検索性や、新コンテンツなどこれから手を加えたい箇所は多々ありますが、早い段階からアウトプットを出し続ける、駄目だったらさっさと辞めるという活動方針は、このネット時代とマッチしているのではないでしょうか。
もちろん、アウトプットを出し続けるためには様々な工夫が必要となるでしょう。また、アウトプットのクオリティもどんなものでも良いという訳ではないでしょう。一定以上のアウトプットを出し続ける集団を作ろうとしている方、HONZそのものに興味を持っていただいた方の参考になるようなコンテンツを、具体的なTipsなども交えながら今後もお伝えしていく予定です。メンバーの集め方、Facebookを活用した活動の活性化、HONZ流新刊書籍の探し方、キュレーター勉強会からHONZ立ち上げまでの経緯などを考えています。どんどん変わっていく(予定)のHONZを一緒に面白がってください。
おまけ HONZ活動記 -0冊目 キュレーター勉強会って何だ??-
今回はHONZ活動記の初回ということで、ここからはおまけとして、HONZメンバー募集から初顔合わせまでについてご紹介します。
2010年12月7日。HONZ活動のスタートはサイトオープンから更に8ヶ月前のこの日にまでさかのぼります。この日、本読み達の間で人気の成毛眞ブログで「キュレーター勉強会」のメンバー募集が発表されました。そう、このときの募集名目は勉強会でした。この時点で成毛代表の頭に現在のHONZの姿がどれ程イメージされていたかは分かりませんが、自分としては、「せっかく沢山の本を読んでいるし、上手に書評書けたら楽しいだろうな。無料の文章教室みたいなもんでしょ」というぐらいの感覚です。成毛眞ブログは選本の参考にしていましたが、何より、評論家でなく”キュレーター”であるという切り口が面白いと感じたことを覚えています。
その際の参加条件、応募要項は以下の通りです。合格者は課題図書1冊、課題図書以外1冊の計2冊の書評を毎月アップする、月1回朝7時に集合するというハードルも併せると、なかなか厳しいと言える条件ではないでしょうか。たまに本屋に行きますよ、というだけの人では応募はためらわれるでしょう。
参加条件:
年齢・職業・読書分野は不問。(出版関係者も参加可能)
2010年に年間最低30冊の書籍を読んでいること。うち半分は新刊であること。
ブログを開設していること。または受講開始までにブログを開設できること。
応募要項:
参加希望メールには「氏名」「職業」「年齢」と「2010年に読んだ新刊本おすすめトップ10書名リスト」および「2010年ナンバーワンのおすすめ本の400-800字の書評」を本文テキストとして書いてください。
ちなみに、私の送ったトップ10書名リスト、ナンバーワン本の書評は以下のようなものです。そう言えば、私も他のメンバーのトップ10を知らないので、そちらも今後公開するかもしれません。
2位 Born to Run
3位 捕食者なき世界
4位 <反>知的独占
5位 世紀の空売り
7位 創るセンス 工作の思考
8位 地球最後の日のための種子
9位 国際貢献のウソ
ドキドキしながら結果発表を待っていると、何と書評家の東えりかまで参加するとのこと。「成毛さんはよくプロの講師を無料で用意したなー。さすがだなー」などと驚いていましたが、後日聞いた話で更に驚きました。何と東えりかは一般応募者として普通にベスト10とレビューを送っていたのです!!ノンフィクション業界を取り巻く状況に対する2人の思いに交錯する部分が多かったのでしょうが、まさかプロが送ってくるとは。一番驚いたのは成毛眞だったと思います。
気もそぞろに待っていると、以下のような選考基準が発表されました。うーん、アドバンテージは3、4くらいかな。それにしても50人以上も応募があるとは、、、
1.書評を読んで、紹介されている本を買いたくなる程度を点数化します。実際にボクが買ったらS、「欲しい物リスト」に入れたらAという具合です。多少文章が下手であっても、1年間の成長を期待し、読者を動かす力を重要視します。
2.TOP10冊中、一般的なベストセラー本の数を点数化します。10冊-8冊または1冊-0冊がベストセラーだった場合はC、2冊-4冊がベストセラーだった場合はAです。ベストセラーを読みつつも、大衆に知られていない良書を発掘することを重要視しているからです。
3.若年層に若干加点しています。つまり(経済学的にいいますと)割引現在価値を算出しています。年齢を重ねるほど通算読書数は増えて有利になるためです。
4.ブログURLが添付されている場合は、デザインなどを含めたブログの魅力度を加点します。
もはや意識を失いそうになりながら結果発表を待っていた2011年1月5日、ついにその日がやって来ました。何と最終的な応募者は60名を越えていたそうで、大学の合格発表以来の鼓動の高鳴りを抑えながら、ページをスクロールすると、
参加者を選ばせていただきました結果、受講者は荒井文月さん、久保洋介さん、栗下直也さん、鈴木葉月さん、高村和久さん、土屋敦さん、村上浩さん、山本尚毅さんの8名に決定いたしました。
結果的に参加者の職種はバラエティに富んでいて、料理研究家、エンジニア、商社マン、マーケッター、新聞記者、絵描き、経営者などです。平均年齢は31.6才(25才~41才)となりました。
あったーーーー!!と叫び声を上げたことは言うまでもありません。しかし、ひとしきり勝利の小躍りをした後不安になってきました。村上浩などという名前はなんともありふれているのです。人口800人程度しかいない故郷の町内にも同姓同名が居たほどです。きっと村上浩という名の料理研究家も、エンジニアも、商社マンもいるでしょう。うーん、困った、もやもやする。「荒井文月」と表記された「新井文月」もきっと同じ気持ちだっではずです。
と思ったらすぐに事務連絡のメールが届いたので一安心。その後も数日間は興奮しっぱなしでしたが、他の合格者も気持ちは同じだったようで、ブログに「大学に合格したときよりも、内定をもらったときよりも」嬉しいと書いている人もいたほどです。全く同感でした。
第1回の開催は2011年1月19日。発表から初回までの2週間ほどは本当にフワフワした気分でした。どんな話が聞けるのだろう、どんな本に出合えるだろう、そして何より、「鈴木葉月」「荒井文月」という何とも可愛らしい名前をした女性はどんな素敵な人だろう。妄想は膨らむだけ膨らんでいました。しかし、第一回の顔合わせで、私の期待は大きく裏切られることになるのです(良い意味でも、悪い意味でも)