ともかく「ぞわぞわ」しているのである。足が無数に生えていて、ぞわぞわしているのである。ほぼ全ページにそのぞわぞわした生き物のイラストが掲載されているのである。そのすべてがすでに絶滅しているとはいえ、本当に気持ち悪い。
人間は人種や民族を超えて、2つの種族に分類できると言っていたひとがいた。すなわち「ヘビ嫌い」か「ムカデ嫌い」かである。自分たちが4本の手足を持っているため、それより少ない手足を持つ動物か、多い動物かのどちらかを毛嫌いするというのだ。ボクの場合、ヘビはまったく問題ない。首に巻けるほどだ。しかし、ぞわぞわはダメだ。足元にムカデがいようものなら文字通り飛びあがってしまう。想像するだけで気持ち悪い。
現在、学名のついた生物種は174万種あまり。うち植物は32万種、動物は137万種だ。動物のうち脊椎動物は6万種しかない。本書がとりあつかう節足動物はなんと100万種もいるのだという。地球の主役は節足動物だったのだ。うわ、気持ち悪い。
本書では古生代の節足動物を三葉虫、ウミサソリ、陸上鋏角類、多足類、六脚類に分類して紹介している。現代の昆虫への道筋も合わせて解説してくれる。目を細めながら読んでみると、最近では化石から何億年も前に生きていた生物の色を推定できるようになっていることを知る。エネルギー分散型X線分光分析でケイ酸塩鉱物の浸透を測定し、ある三葉虫は目の色が緑、体が赤、ということまで判るのだという。真っ赤なぞわぞわ・・おえっ。
ムカデ、ヤスデ、ゲジゲジの類は多足類と呼ばれる。もっとも気持ち悪い部類なのだが、そのなかでもアースロプレウラという大ムカデがいる。石炭紀に生きていたらしい。体調は1.8メートル。最大3メートルにもなるという。そのイラストがなぜか水着でおよぐ女性の横に描かれているため、気持ち悪さが倍増する。目がクルっと裏側に回ってしまいそうだ。
ともかく、本書はぞわぞわした生き物たちを解説した決定版である。今後、同様の本が出版されても、たぶん買わないので、ボクにとっては空前絶後のぞわぞわ本である。それにしても50センチもあるクモ、メガラクネも本当に気持ち悪い。クモなどを病的に嫌うひとたちを「アラクノフォービア」というらしい。なんと呼ばれようと、気持ち悪いものは気持ち悪いのである。