『どうすれば人を創れるか』 石黒浩

2011年6月7日 印刷向け表示
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どうすれば「人」を創れるか―アンドロイドになった私

作者:石黒 浩
出版社:新潮社
発売日:2011-04
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世界の産業用ロボットの7割を日本製のロボットが占めている。海外から見れば、日本はロボットの国。政治家よりもロボットの方が認知度は高そうだ。そんな日本がつくるロボットの一つで、人間型ロボットが本書が取り扱うアンドロイド。商業化されれば私たちの生活がどのように変わるのだろうと妄想しながら本書を読むことをおすすめする(個人的にASIMOやEVOLTAも欲しいのだが、筆者がつくるアンドロイドはかなり欲しい)。

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ネットで動画検索してもらえばいいが、筆者がつくるアンドロイド「ジェミノイドF」は見た目は人間そっくりで、動きもとても人間らしい。ロボット特有の「不気味の谷」(見かけが人間そっくりなのに動きがロボットのようで隔たりがあること)がかなり克服されている。アクチュエータ(モータ等を使って体を動かす装置)を空気で伸び縮みする空気アクチュエータを使い、無音で且つしなやかな動作を再現できるようにしている。首の動かし方やまばたき等、本当に「人間らしい」。文楽人形の現代版をみているようだ。

操作は遠隔操作できるようになっている。近い将来、海外出張や海外赴任の際にはSkypeではなくてアンドロイドを使って家族と会話する時代が来るだろう。テレビ電話よりも同じ空間を共有できそうだ。

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筆者が最近作っているロボットは「テレノイド」。明らかに人間に見えるが、対話をする以外に一切不要なものを持たない80cmくらいの小型アンドロイド。一見不気味な形をしているが、遠隔操作による対話が始まると老若男女気に入るようだ。費用も30~100万円くらいで、「ジェミノイドF」の1,000万円よりだいぶ安い。本書を読んでいるとこの新たな携帯電話を本当に買いたくなってくる。関西で一人暮らしの祖父に買ってあげれば、最初は「なんだこれ」といぶかしがるだろうが、すぐに気に入るだろう。

本書は筆者がとりくむ色々なアンドロイドを紹介しており、それはそれで読み応えあるが、何と言っても本書の真骨頂はアンドロイドを通して「人間・自分とは何者か」という問いに迫っていく点。ぜひ本書を手にとって人間とロボットの違いについて考えてほしい。読めば読むほど技術者・研究者ではなく、芸術家や哲学者が書いた本のように思えてくる。

アンドロイドを日本伝統文化の発展系として見守るのも楽しそうだ。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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