『出ない順 試験に出ない英単語』新刊超速レビュー

2012年10月27日 印刷向け表示
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世の中には真の意味で、役に立たない本というものがある。あらゆる本は役に立たない、という議論もあるが、そんな深遠なことじゃなく、見た瞬間に役に立たないとわかる本、ばかばかしさやくだらなさを乗り越え、「役立たずな方向」に、全力で、一生懸命、真剣に突き進む本たちのことだ。最近なら『醤油鯛』もすばらしいが、ここにまた一冊、そんな愛すべき本が誕生した。

出ない順 試験に出ない英単語

作者:中山
出版社:飛鳥新社
発売日:2012-10-27
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試験に出ないのである。しかも「出ない順」である。

ちなみに最初の単語、すなわちもっとも出ない単語はsalmon carpaccioである。carpaccioって英語か、というツッコミは脇に置き、例文は下記だ。

Bob laughed so hard that the salmon carpaccio came out of his nose.

ボブは笑い過ぎてサーモンカルパッチョが鼻から出ました。

皆さん、大事ですから暗記して下さい。

対象は大学受験ではなくTOEIC。基本はサラリーマンの会話である。

Bob secretly replaced the assistant manager’s treasured Chocorooms with Chococones.

ボブは係長が大事にしていたきのこの山を、こっそりたけのこの里に交換した。

あまりに酷い。号泣する係長の姿が目に浮かぶ。みなさん、これで、「Chocorooms」(きのこの山)と「Chococones」(たけのこの里)を覚えましたね。

What did you do with the client list?

I inserted into the section chief’s bottom cleavage

「顧客リストどこやった?」

「課長の尻の割れ目に挟んでおいたわよ」

この例文で覚えるべき単語は言うまでもなくbottom cleavage。もう忘れられないはずだ。

本書の単語は下ネタが多くを占めるが、戦争、兵器ネタが結構含まれているのも好ましい。

Could you do an army crawl with me past the station tonight? It`s dangerous there.

今晩ご一緒にほふく前身どうですか? 駅近くに危険地帯を見つけたんですよ。

きりがないので、これぐらいにするが、これらはまだ穏やかなほう。例文が過激になればなるほど、あるいはくだらなくなればなるほど、思わず、掲載された英単語を覚えてしまう(そして覚えても役に立たない)。

twitterでは人気を博しているが、本書はしっかりとネイティブのチェックを受け、また渾身のイラスト、さらにネイティブの発音が聞けるCDまで付いている。暗記し、CDを繰り返し聞けば、「無駄な努力」という、日本における英語学習の本質を体感することができるだろう。

ちなみに、版元は今HONZ的に注目の飛鳥新社。朝会でもなぜか飛鳥新社の本が次々登場し、皆で、飛鳥新社はいったいどうしてしまったのか、と話題になっていたのだ。

下記ラインナップを見ればわかるように、そこには驚くべき「書物多様性」がある。貧すれば鈍すという言葉のとおり、業界が縮小すればするほど、ベストセラーの二番煎じや、一定の読者を確保しやすい安直な企画に流れていき、さらに読者が離れてゆく、という悪循環が生じるが、そんななかでのこのラインナップは、まさに「神保町の奇跡」である。編集もスゴイ(というかちょっとオカシイ)が、営業もエライ。『精密立体 ペーパーバイオロジー』(下記参照)とか、どう売ろうか思わず頭を抱えたことだろう。その苦労は察するに余りある。

精密立体 ペーパーバイオロジー (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

作者:土屋英夫
出版社:飛鳥新社
発売日:2012-09-08
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三葉虫やアノマロカリス、ロバート・フック顕微鏡などのペーパークラフトが作れてしまう、ディープすぎる一冊。私が朝会で嬉々として紹介したが、その頃すでに成毛眞はアノマロカリスを作っていた。

世界で一番詳しいウナギの話 (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

作者:塚本勝巳
出版社:飛鳥新社
発売日:2012-09-07
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村上浩の琴線にも触れる一冊。海洋調査のリアルな実態も面白かった。

ゼロからトースターを作ってみた

作者:トーマス・トウェイツ
出版社:飛鳥新社
発売日:2012-09-14
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東えりか絶賛。レビューはこちら。よくぞ翻訳出版した! 著者インタビューももうすぐ出します。

リーダーを目指す人の心得

作者:コリン・パウエル
出版社:飛鳥新社
発売日:2012-09-29
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こちらは久保洋介が心惹かれた一冊。

川ガキ

作者:村山嘉昭
出版社:飛鳥新社
発売日:2012-07-25
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いいですね〜。足立真穂が朝会で紹介。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!