サイエンス本である。副題の「秒読みに入った人類壊滅の日」というのは言いすぎだと思う。火山学者には1000年など秒単位にみえるのであろう。じっさい、筆者は噴火が予想される地球上の超巨大火山の例として、ニュージーランド北島の火山群をあげている。「噴火間隔は、平均すると約7400年に1回ということになる。最後の破局噴火からすでに5500年が経過しているので、そろそろ次の破局噴火の圏内に入ってきたといえるかもしれない。」という。まだ、2000年ほどの余裕がありそうだ。
ところが、この破局噴火というのはじつはとんでもない代物なのだ。地球最大級の破局噴火は5万年に1回の割合で起きるのだという。もし、これが火山の巣であるスマトラ島で起こると、噴煙は3万メートルに達し、その直径は1000キロを超えるらしい。発生した火砕流はマラッカ海峡とインド洋北部まで達し、海は厚さ数十センチの軽石で覆われることになる。東南アジア・インド亜大陸も火山灰で覆われ、一ヶ月以内に数億の餓死者がでると予想される。
じつはここからがすごい。噴火物で地球が長期的に覆われるため、温帯の平均気温は12度も下がる。そのため、あらゆる国で農業は壊滅する。この冷夏は6年続くのだという。こりゃ、だめだ。人類は壊滅するであろう。しかも、この破局噴火はかならずいつかは起こるのだ。明日、地球上のどこかで前兆が見られるかもしれない。たしかに「秒読みに入った」として防災意識を高めておく必要がある。
じつはこの本は2002年に出版されたSF小説『死都日本』を意識して出版されたらしい。この小説は当時、きわめて正確な火山学的な知識に基づいて書かれており、物語としてリアルに描ききっているため、のちに刊行を記念して学術シンポジウムが開かれたという。5年前に読んだ『死都日本』については別の日のブログで紹介してみよう。