エジソン、ヘミングウェイ、ゴーギャン、ロックフェラー、チャーチルなど11人の偉人たちの業績や人柄の「おさらい」と、その不肖の息子たちについての歴史エッセイだ。小見出しを少し抜き出してみよう。雰囲気がお判りになるだろう。「酒と女に溺れるケネディ家最後の息子」「エジソンの名を使って詐欺」「たった3ドル50セントの万引きで逮捕(アル・カポネの息子)」「鬱病、麻薬常用の末に、性転換(ヘミングウェイの息子)」「ゴーギャンの息子をウリに飲んだくれ」「酒の飲みすぎで死んだ大宰相の息子(チャーチルの息子)」
いやはや、かなりの息子たちが酒や薬に溺れて人生をメチャクチャにしている。小見出しどころか、マハトマ・ガンジー(本書では正しくガンディーとしている)の章のタイトルは「酒と女に溺れ、反抗心でイスラーム教徒になる」だ。あの「非暴力・不服従」にして「インド独立の父」の長男の生涯は悲惨だ。父ガンジーの理想主義的な教育方針に反抗しつづけた長男は最後には暗殺された父を追うように亡くなったという。
息子たちだけでなく、偉人たちの生涯についても非常に手際よくまとめられているのだが、その雰囲気は透明水彩の風景画のようだ。枯れた歴史エッセイとでもいうべきであろうか。文庫版だし、ちょっとした小旅行に帯同するにはもってこいの本だと思う。