ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
キチンと読み終えてから紹介するべき本だと思うのだが、怖いもの見たさで第4章の「幻覚妄想」から第5章の「入院」までを読んでしまい、書かずにはおれない気持ちになってしまったのだ。正直なところ統合失調症患者のイメージは理解不能で怖いという感じを持っている人もいるのではないか。しかし、その2章を読むだけで大変な病気であり、本人は本当にしんどそうで、むしろ社会が守ってあげなくてはと気づかされる。そのいっぽう、この本は私小説として非常に高いレベルに達している。すこぶる明晰な文章で妄想と治療とアニメと読書、そして家族や友人との関係を描いていて、著者の言語世界に引き込まれてしまう。著者は24歳のときに発症し、現在は49歳。柏崎にある精神障碍者専用のグループホームに暮らしているという。