『「役に立たない」研究の未来』それを決めるのはいったい誰?

2021年6月16日 印刷向け表示
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「役に立たない」研究の未来

作者:初田 哲男 ,大隅 良典 ,隠岐 さや香
出版社:柏書房
発売日:2021-04-14
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 自分の研究を「何の役に立つか」と質問されたら科学者は明確に答えられるだろうか。「おもしろいから研究しているのだ」と堂々と言える人は少ないだろう。日常生活で研究者を直接知る機会は少なく、研究は象牙の塔の中だけで行われていると思われている。

それではいけないと本書の編者・柴藤亮介は考えた。彼は学術系クラウドファンディングサイト「academist」を立ち上げ、個人が研究費を支援できるサービスを構築したが、注目されるためには「役に立つ」と主張する研究になりがちだ。だが「役に立つ/立たない」は誰が決めるのか。「役に立たない研究」の意義は何か。

この問題を解くため2020年8月、理化学研究所の初田哲男、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典、名古屋大学大学院経済学研究科教授で科学史を専門する隠岐さや香の3名のオンライン座談会が開かれた。

【初田哲男×大隅良典×隠岐さや香 オンライン座談会 Presented by iTHEMS & academist 公開版】

第一部はそれぞれの講演会、第二部は3人のトークセッションに視聴者からの質問を交えた活発な意見交換が行われ、研究者側の問題だけでなく日本の学術研究のあり方を考えさせる機会となった。

科学の発展は循環的で波及効果が大きく、長期的視点が必要で多様性が本質的である、と初田は言う。

大隅は「科学技術」という言葉によって”基礎科学は技術のためにある”、と思われている誤解を解かなければならないと力説する。

また隠岐は、現代は「未来は良くなる」という気持ちが持てず「繁栄の約束」が消滅した時代で、人々は余裕を失っている、と語る。

研究とは「おもしろい」ことを突き詰めたいという思いが強ければ継続できる、と繰り返される。

mRNAを使った新型コロナワクチンはハンガリー出身の科学者の40年にわたる地味な研究の成果だ。彼女はどんな思いで続けていたのだろう。科学者に憧れる子どもに、研究はおもしろいと胸を張って伝えたい。(週刊新潮6月10日号)

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「役に立たない」科学が役に立つ

作者:エイブラハム・フレクスナー ,ロベルト・ダイクラーフ
出版社:東京大学出版会
発売日:2020-07-29
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 登壇者の初田哲男氏が監訳。プリンストン高等研究所の初代所長と現所長によるエッセイ。学問や研究の意義について、あらためて考えさせてくれる。

 

 

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!