2月も書店店頭にはお客様が多い日が続きました。巣ごもりが続く中、勉強して知識を増やすということに取り組んでいる方も多いようです。まずは先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。
日販オープンネットワークWINから2月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/2/1~2021/2/28の売上)
1月に逝去された半藤一利さんの最新刊が1位に輝きました。この後も新刊が続いています。単行本ではリクルート創業者の江副浩正を描いた『起業の天才!』が大きく動いています。
「リクルート事件」のイメージばかりが優先しているものの、経営者としてどういう功績を残してきたのかを丁寧に追っています。リクルートの光と影が見える話題の1冊。
出版社 | 銘柄名 | 著訳者名 | |
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1 | 文藝春秋 | 歴史探偵忘れ残りの記 | 半藤一利 |
2 | 小学館 | コロナとバカ | ビートたけし |
3 | 幻冬舎 | 歴史のじかん | 山崎怜奈 |
4 | 集英社 | 約束の地 大統領回顧録1 上 | バラク・オバマ |
5 | 東洋経済新報社 | 起業の天才! | 大西康之 |
6 | 扶桑社 | いま救国 | 青山繁晴 |
7 | 集英社 | 約束の地 大統領回顧録1 下 | バラク・オバマ |
8 | SBクリエイティブ | 新説の日本史 | 河内春人 |
9 | 朝日新聞出版 | パンデミック以後 | エマニュエル・トッド |
10 | 文藝春秋 | 日本の分断 | 三浦瑠麗 |
11 | 集英社 | 物理学者のすごい思考法 | 橋本幸士 |
12 | 講談社 | フォン・ノイマンの哲学 | 高橋昌一郎 |
13 | 小学館 | 菅義偉の正体 | 森功 |
14 | SBクリエイティブ | 昭和という過ち | 原田伊織 |
15 | NHK出版 | 大河ドラマの黄金時代 | 春日太一 |
16 | 朝日新聞出版 | 財務3表一体理解法 | 國貞克則 |
17 | あさ出版 | 御社にそのシステムは不要です。 | 四宮靖隆 |
18 | 筑摩書房 | 問いの立て方 | 宮野公樹 |
19 | 集英社 | 明治十四年の政変 | 久保田哲 |
20 | PHP研究所 | 劣化する民主主義 | 宮家邦彦 |
ここからはランクインしなかった本から、2月発売の注目タイトルを紹介していきます。
映画『アメリカvsビリー・ホリデイ』(仮題)の原作としても話題になっています。麻薬は圧倒的な悪なのか、人類は100年にわたってどのようにこの存在と付き合ってきたのか。本当にいまの麻薬対策が間違っていないのか。
私たちが想像する「麻薬」の歴史と裏側が見えてくる本として、アメリカでもベストセラーとなった1冊です。
「戦後再発見」双書からはこちら。著者の新原昭治氏はアメリカの機密解禁文書を発掘し、日米間に存在していた様々な軍事密約に光をあて日本に知らしめてきた人物。「密約研究の創始者」「密約研究の父」と呼ばれた著者の集大成ともいえる本になりました。日本の米軍基地がどういう立ち位置のもとにあるのか、どういう意義をもっているのか、を体系的に明らかにします。
2018年に刊行された本の邦訳です。ビル・ゲイツもこの事件のひどさに呆れ慄いているようです。スキャンダルの主人公は血液検査ベンチャー「セラノス」。この社を起業したのはエリザベス・ホームズという女性で、たった1滴の血液でさまざまな検査が出来る、血液検査に革命を起こす!と世の中に現れ、多額の資金を調達します。しかしそれらは全て詐欺。シリコンバレー最大の詐欺事件として今でも話題になっている事件を丁寧に紐解いたのがこちら。ジェニファー・ローレンス主演での映画化も決定しているそう。
体内の様子を見る、という本は子ども向けにも大人向けにも結構人気なのです。ただ、この本がすごいのは対象となっている生物が神話や伝説に登場する異形たちだ、ということ。
ユニコーンやドラゴン、セイレーン、バジリスク、、、といった伝説の生物たちの身体の構造が明らかに(?)なっています。アレは角なのか、それとも骨なのか。口から出てくる炎を産み出す器官も明らかにされたりしているのでしょうか。気になります。
ビッグデータという言葉は耳にタコができるくらい聞いてきましたが、その中で分析が不可能、または分析されず価値もわからないまま存在しているのが『ダークデータ』です。
しかし、価値がわかっていないだけで、私たちがいまだ知らない情報が多く含まれている可能性も。このデータに私たちはどう付き合っていけばいいのか。活用する術はあるのか。存在を知り使うための術を著者が伝授してくれている1冊。
スティーブン・ピンカーの推薦を得て出てきたこちら。多くの人が人間は騙されやすいと結論づけている中、この著者は異論を投げかけています。皆がそう言うほど人は騙されやすい生き物ではないのではないか。という疑問を元に、矛盾や誤りをつきつつ定説をひっくり返していきます。次から次へと詐欺の手口が開発され、フェイクニュースやデマが溢れる世の中をどうやって渡っていったらいいのでしょう。その答えも見つかるかもしれません。
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まだまだ巣ごもり生活が必要とされそうです。読書時間をお楽しみください!