世の中は『鬼滅の刃』の映画公開により、鬼滅旋風が吹き荒れています。一方で、政治や経済にも大きな動きが出てきており、アフターコロナの世界を予想する本も続々発売されています。
前月に続き、先月出た本(ノンフィクション)ランキングを調べてみました。日販オープンネットワークWINから10月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2020/10/1~2020/10/31の売上)
なんと言っても最大の話題は菅首相本。就任後もっとも早く発売されたのは講談社文庫の『したたか 総理大臣・菅義偉の野望と人生』でしたが、こちらは残念ながら9月発売。10月には本人の著書『政治家の覚悟』が復刊され1位となりました。
また、アメリカの大統領選挙や、コロナ後の世界のあり方を考える、政治・経済ジャンルの動きが良くなっています。10位に入った『民主主義とは何か』は10月下旬の発売すぐから大きく話題になり民主主義について学び考える注目の1冊となっています。
出版社 | 銘柄名 | シリーズ名 | 著訳者名 | |
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1 | 文藝春秋 | 『政治家の覚悟』 | 文春新書 | 菅 義偉 |
2 | 講談社 | 『ペルソナ 脳に潜む闇』 | 講談社現代新書 | 中野 信子 |
3 | 小学館 | 『娘のトリセツ』 | 小学館新書 | 黒川 伊保子 |
4 | 朝日新聞出版 | 『ジョン・ボルトン回顧録―トランプ大統領との453日』 | ジョン・ボルトン | |
5 | 潮出版社 | 『北海道から世界へ、未来へ!「いなつビジョン」』 | いなつ久 | |
6 | 河出書房新社 | 『緊急提言パンデミック』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | |
7 | SBクリエイティブ | 『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』 | SB新書 | 溝口 優司 |
8 | 中央公論新社 | 『古代メソポタミア全史』 | 中公新書 | 小林 登志子 |
9 | SBクリエイティブ | 『いい教師の条件』 | SB新書 | 諸富 祥彦 |
10 | 講談社 | 『民主主義とは何か』 | 講談社現代新書 | 宇野 重規 |
11 | 中央公論新社 | 『物語東ドイツの歴史』 | 中公新書 | 河合 信晴 |
12 | 朝日新聞出版 | 『池田大作研究』 | 佐藤 優 | |
13 | 岩波書店 | 『三島由紀夫』 | 岩波新書 | 佐藤 秀明 |
14 | SBクリエイティブ | 『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書【経済編】』 | 山﨑 圭一 | |
15 | 岩波書店 | 『藤原定家『明月記』の世界』 | 岩波新書 | 村井 康彦 |
16 | 岩波書店 | 『アメリカ大統領選』 | 岩波新書 | 久保 文明 |
17 | 文藝春秋 | 『半グレと芸能人』 | 文春新書 | 大島 佑介 |
18 | 中央公論新社 | 『アメリカの政党政治』 | 中公新書 | 岡山 裕 |
19 | 宝島社 | 『ルポ禁断の日本地図』 | 鈴木 智彦 | |
20 | 光文社 | 『丁寧に考える新型コロナ』 | 光文社新書 | 岩田 健太郎 |
ランクインしていない中にも興味深い本は盛り沢山。ここからは10月発売の本から注目タイトルを紹介していきます。
没後500年を経たレオナルド・ダ・ヴィンチ、まだまだ作品にも、本人にも謎が多くそれらが見る者を惹きつけています。これはその幻の名画と言われる「サルバトール・ムンディ」の謎を描いたノンフィクション。最後のダ・ヴィンチの作品と言われ、510億円という史上最高額で落札された裏には様々な人物や思惑が蠢いていたのだそうです。その足跡から美術市場の裏側に迫ります。
人類史に衝撃を与えるという意味で『銃・病原菌・鉄』『サピエンス全史』とも並び称されているという1冊。「飼いならす」とは人が野生の種に手を加え家畜にしたり栽培したりした事。その「飼いならし」は人間を爆発的に増やし、文明復興のきっかけになりました。一方、増えすぎた人間の活動は自然や生態系に大きな影響を及ぼしています。人間と関わりが深い動植物を通して、人間のこれからを問う1冊です。
刺激的なタイトルです、私たちが当たり前に享受している「民主主義」。それはもしかしたら想像以上に脆いものなのかもしれません。著者は民主主義の敵としてヒトラーを思い浮かべていると、重大なサインを見逃すことになる。民主主義の脅威はトランプではなく、ザッカーバーグだと説きます。民主主義の壊れ方のシミュレーションはどんな展開を示すのでしょうか。
一方で、ファシズムの復活に警鐘を鳴らす『ファシズム』も邦訳が発売されています。あわせて読んでみるのもオススメ。
タイトルと内容情報の衝撃で思わず手を止めてしまったのがこちら。著者は世界ひきこもり機構(GHO)を創設した50代男性だそう。そもそもそんなグローバル展開が出来ている段階でひきこもりではないのではないのか…と思ってしまったのですが、著者はインターネットを通じ世界中のひきこもりたちと対話します。世界各国のひきこもりが何を考え、どう暮らしているのかを明らかにしたという意欲作。対象となる国に先進国だけでなく、あの北朝鮮が入っているところにも興味をおぼえます。
ミャンマーといえば、仏教国、アウン・サン・スー・チーなどのイメージがありますが、その国の実態を理解するには黒魔術などのおまじないの存在を理解することが必要なのだと著者は説きます。政治家が権謀術数に黒魔術を使っているのは過去の事ではないのだと。ミャンマーの謎を、市井から大統領まで多くの層を取材し明らかにした意欲的なノンフィクション!
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新型コロナウイルスは世界的な第3波の流行を向かえつつあります。世界は果たしてどこに向かうのか、コロナ後の世界を知ろうとする本の出版はまだまだ続きます。多くの本を読み、今の世界を読み解き、今後の行き先を考えていく時期です。読書の秋、よい本との出会いがありますように。