発売した瞬間にHONZメンバーがどよめく、というか「おおっ!」と沸くことが最近頻発しています。面白いノンフィクションが次々と世に送り出されている事の証左でしょう。この『世にも危険な医療の世界史』もそんな1冊でした。
エビデンス、エビデンス!と耳にタコができるくらい聞かされている世の中に、目をむくような医療、治療法が語り尽くされています。さて、これを読んでいるのはどんな方でしょう。
まずは読者層から見ていきます。
残念ながらまたまた読者が少なく、サンプルデータが溜まりきっていません。ノンフィクションは50代以上の層によく読まれる事が多いのですが、こちらについては若年層も多めという結果が出ています。男女比は4:3といったところでしょうか。
続いて併読本を見ていきます。『世にも危険な医療の世界史』を買った読者が過去2年間で購入したものをランキングしたのがこちら。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『こわいもの知らずの病理学講義 』 | 仲野徹 | 晶文社 |
1 | 『感染症の世界史 』 | 石弘之 | KADOKAWA |
3 | 『死に山』 | ドニー・アイカー | 河出書房新社 |
3 | 『昭和の怪物七つの謎』 | 保阪正康 | 講談社 |
5 | 『日本軍兵士』 | 吉田裕 | 中央公論新社 |
5 | 『「死」とは何か』 | シェリー・ケーガン | 文響社 |
7 | 『歯痛の文化史』 | ジェイムズ・ウィンブラント | 朝日新聞出版 |
7 | 『陰謀の日本中世史』 | 呉座勇一 | KADOKAWA |
7 | 『世界を救った日本の薬』 | 塚﨑朝子 | 講談社 |
7 | 『日本国紀』 | 百田尚樹 | 幻冬舎 |
7 | 『美貌のひと』 | 中野京子 | PHP研究所 |
7 | 『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 』 | デイヴィッド・S・キダー | 文響社 |
仲野先生のファンが読者の中心!? このほかも医療関連のノンフィクションやHONZで話題になった本が上位に並んでいます。『感染症の世界史』『歯痛の文化史』など、ニッチなジャンルの歴史読み物もずらっと並んでいます。「○○の歴史」だけを揃えて店頭フェアをやったらなかなかの面白い景色が広がるだろうな…とラインナップを眺めながらそんなことを考えました。
それでは最近の購入本から気になる本をいくつか紹介します。
ペンは剣より強し。というのとはちょっと違いますが、書物が産まれて以降「世界を変えた」書物はいくつかあります。例えば…『論語』『アラビアン・ナイト』『ノストラダムスの予言集』『ガリヴァー旅行記』『サミュエル・ピープスの日記』『スポック博士の育児書』『一九八四年』『沈黙の春』『悪魔の詩』『ハリー・ポッターと賢者の石』『21世紀の資本』……。これらをいくつもの図版とともに紹介した、本好きにはたまらない1冊。
著者は元税務調査官。ローマ帝国の崩壊、宗教改革、南北戦争などなど、歴史の転換期の背景には脱税という問題が絡んでいた。と著者は説きます。金持ちが税金から逃れ、庶民が大増税をされたことで不満が高まって、国が乱れたことがその理由。脱税は今に始まったことではなく、世界はずーっと昔から税金問題に苦しめられていたようです。
宗教学者と霊長類学者が真剣に人類史と宗教を語りあいました。文明の誕生とともに生まれたと言われる宗教の起源についてさらに踏み込んで、チンパンジーやゴリラの世界にその思考が存在していたのか?についても議論を戦わせています。過去にとどまらずIT社会との関係も。刺激的な1冊。
奇妙な医術を操るマッドサイエンティストに憧れる人は変人と名のつく本がお好きなようです。こちらは京大で実際に行われている公開授業を書籍化したもの。前述の山極先生の授業の他、注目を集める教授陣が、様々なジャンルについて一般人にもわかりやすく語っています。
学ぶというのはどういうことなのか、についてじっくり考えてみるのはいかがでしょう?
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危険な医療に興味がある人は医療関係者、歴史好き、そしてトンデモ本好き。そんな読者層でした。生涯学習の重要性が説かれ注目を集める中、大人向きの教養本や学び直しの本の出版が増えてきています。教科書を読み直すだけでも面白いですが、興味をもったテーマについて深く掘り下げてみるのもおすすめ。今、歴史ジャンルには面白いものがいっぱい登場してきていますよ。