4月10日、ブラックホールの撮影に成功したというニュースが流れてきました。SF小説や映画でもおなじみのブラックホール。撮影成功のニュースは、宇宙にそれほど関心がない人にとってもわくわくする話です。
ブラックホールがどうなっているのか、ブラックホールの中に何があるのかというのは多くの人が気になっている疑問であり、多くの研究者が取り組んでいる課題です。こういった人類が抱いている疑問に天才物理学者、ホーキング博士が答えたのがこの『ビッグ・クエスチョン』。
1 神は存在するのか?
2 宇宙はどのように始まったのか?
3 宇宙には人間のほかにも知的生命は存在するのか?
4 未来を予言することはできるのか?
5 ブラックホールの内部には何があるのか?
6 タイムトラベルは可能なのか?
7 人間は地球で生きていくべきなのか?
8 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
9 人工知能は人間より賢くなるのか?
10 より良い未来のために何ができるのか?
という質問に、答えています。3月6日のNHK「クローズアップ現代+」”ホーキングの遺言”で放映され話題になりました。
胸躍る疑問に興味を持ち、ホーキング博士の遺言を受け取っている読者はどんな人たちなのか。今回は『ビッグ・クエスチョン』について見ていきます。
まずここまでの売行きを見てみましょう。(日販オープンネットワークWIN調べ)
店頭に並び始めたのが3/14(逝去から1年となる命日)。事前にテレビで取り上げられていることもあって、非常に大きな初動を見せています。きっと4/10のブラックホール撮影成功の日にも売れたのでは…と思ったのですが、残念ながら4/10当日の大きな動きは見られませんでした。残念!
4/19に再びテレビで特集されていますので、今後の動きがどうなるのか楽しみです。
続いて、読者層です。
男女比は76:24で男性が圧倒。親子で読んでいる世代が多いかなと予想していたものの、世代別で見ると60代が最多という結果になりました。科学的な謎に興味がある世代という以上にNHKの視聴世代ということも大きな要素になっているのかもしれません。
この読者はどんな本を読んでいるのでしょうか。2018年3月~現在までの併読本上位10位は以下の通り。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『昭和の怪物七つの謎』 | 保阪正康 | 講談社 |
1 | 『一切なりゆき』 | 樹木希林 | 文藝春秋 |
3 | 『日本史の論点』 | 中公新書編集部 | 中央公論新社 |
4 | 『ホモ・デウス[上]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
5 | 『ホモ・デウス[下]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
6 | 『「死」とは何か』 | シェリー・ケーガン | 文響社 |
7 | 『AI vs.教科書が読めない子どもたち』 | 新井紀子 | 東洋経済新報社 |
7 | 『国体論』 | 白井聡 | 集英社 |
9 | 『未来の年表[2]』 | 河合雅司 | 講談社 |
9 | 『ホーキング、宇宙を語る』 | スティーヴン・ウィリアム・ホーキング | 早川書房 |
『ホモ・デウス』他、この1年で話題になったサイエンスノンフィクションが多く読まれているようです。『ホーキング、宇宙を語る』は1995年発売の文庫ですが、昨年3月のホーキング博士の逝去を受け、大きく動いたことでランキング上位に入ってきました。
それでは、この読者併読本から注目本を何冊か紹介していきます。
テレビを見ていると”世界のビックリ動画”みたいな番組がよく目につきますが、こちらはそのナショナルジオグラフィック版。子どもたちに人気の『ざんねんないきもの事典』にも通じるテーマでもあります。目次を見ているだけでも興味深いテーマばかりですが、くさすぎて絶滅しかけている鳥というのに興味がわいています。お休み中、家族で盛り上がるにもおすすめ。
数学者の生き方、生き様というのはこれまで何度も小説や映画の題材になっています。おおかた変わっている人ばかりなのだろうな…と予想出来る数学者の生き様、考え方を文章にまとめたのが、二宮敦人。『最後の秘境 東京藝大』で東京藝大の学生たちの姿を克明に描き出し、世を爆笑の渦に巻き込んだ作家です。この筆にかかれば数学者たちの日常も身近で興味深いものに…理系を目指す人、子どもに目指してほしい親必読(?)の1冊。
併読本にはSF小説も多くラインナップされていました。最近の新刊で人気だったのがこちら。終身刑で服役中の主人公にもちかけられたのは火星基地建設プロジェクトへの参加。主人公は刑務所で人生を終えることを避け、火星で生きることを選択。老若男女、7名の囚人がプロジェクトに参加しますが、ひとり、またひとりと命を落としていきます。主人公は火星で生き抜けるのか!?緊迫のSFです。
試験管内で生命を模した分子システムを構築することにより、生命の起源と進化を研究している著者。生命とは「勝手に増えてどんどん変わっていく」やっかいなものだと著者は説明しています。ただ、その中でも「協力」と「裏切り」がなかったら単細胞生物からヒトにつながる進化は起きなかったのだそう。
新書というわかりやすいサイズに、壮大な生命の歴史がまとまった初心者にもおすすめできる注目本。
” 成毛眞さん絶賛!”の文字が躍っているので、HONZ読者にはすでにおなじみかもしれません。天才数学者の自叙伝が発売すぐに話題を集めています。カジノで、投資で、数学を駆使して誰もが憧れる必勝法を編み出して荒稼ぎしたのは天才数学者。答えが出ない数学の未解決問題に挑む数学者が注目を集める一方で、こういう人もいたのか…とどこか親近感を覚えてしまいます。これからまだまだ売行きを伸ばしそうな注目本です。
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ホーキング博士がもし、ブラックホールの写真を見たら、撮影成功のニュースを聞いたら、どんなことを考え、どんなメッセージを出したのでしょうか。世界最高の知性を失ったことを改めて寂しく思いました。一方で、本や映像を通じ、素晴らしい知性と触れあえるのは本当に幸せな事なのだと思います。たまには空をゆっくり眺めながら、その知性たちが謎を解きつつある宇宙について考えてみるのはどうでしょう。