『苦しかったときの話をしようか』新刊超速レビュー

2019年4月17日 印刷向け表示
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事業縮小により会社を退職し、4月から求職活動中の自分にとって、『苦しかったときの話をしようか』というタイトルにはとても心惹かれるものがあった。どんな内容か確認もせずに買ったところ、これが素晴らしい本だったので紹介したい。

仕事がうまくいかず、自己評価が極端に低くなっている人や、後ろ向きな仕事をさせられて、自分自身の存在価値を疑う状況に追い込まれている人には、ぜひともこの本を読んでいただきたい。著者が黒歴史と呼ぶ状況から多くの学びを得て、きっと心が救われるはずだから。

本書は就活に悩む娘に向けて、子供の成功を願う父親が書いたものだ。著者はUSJをV字回復させたマーケターの森岡毅。彼がビジネスの最前線を生きてきた実務家としての視点で、娘に将来の仕事のことを考える際に必要なフレームワークと、学校では教えてくれない世界の真実を伝えている。特定の誰かに向けて書かれた文章というのはとても強い力を持っている。その力強い想いはきっと多くの人の心に響くだろう。これから就職活動をする人はもちろんのこと、転職や起業を考えている人にも、この本が役に立つに違いない。

世の中には「やりたいことがわからない」と悩んでいる人がたくさんいる。私もその一人だ。やりたいことがわからない原因は自分のことをよく知らないことにある。自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずもなく、選べるはずもないと著者はいう。

自分のことを知っている度合いをSelf Awarenessといい、幸福を掴みたければ、このSelf Awarenessを高めることが必要である。なぜなら成功というのは必ず人の強みによって生み出されるものだからだ。その成功を生み出す強みこそが、あなたの「宝物」である。この「宝物」は誰もが持っているものだ。この本では自分の中での相対的な特徴(≒強み)を「宝物」と定義している。ただしこの特徴が「宝物」になるか、「弱点」になるかを決めているのは文脈である。同じ特徴でも状況によっては弱点になりうるのだ。

キャリアを考える上で重要なのは、その人が持っている特徴が強みに変わる文脈を探して、その勝ち筋を考えることだという。強みを生かせる場を見つけることが大事なのだ。就職活動や転職活動においてキャリアの正解はたくさんある。むしろ不正解は一つしかないという。それは自分にとって決定的に向いていない仕事についてしまうことだ。それ以外はみな正解なのだ。つまり就職も転職もたった一つの大正解、大吉を引こうとするのではなく、大凶や凶を引かないようにすればいいのである。

この言葉に、人生瞑想中の自分はどれほど励まされたことかわからない。失敗しない人生とは何もしなかった人生と同義である。就職や転職に失敗したら、次を探せばいいだけだ。何事も最初からうまくできる人などいない。最後尾からのスタートになっても構わない。自分の人生を輝かせるために、成長を目指し前に進んでいこう。さて最後は著者のメッセージを引用してレビューを締めることにしよう。

「この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!」

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