「1日1ページ」「読むだけで身につく」…というのに続くのが「世界の教養」。HONZメンバーとしては看過しちゃっていいのか悪いのか、なんかもっと教養ってじっくり身につけるべきものの気もするし…といった思いを抱えながら、うっすら横目で見ていた本が、現在ベストセラー街道をひた走っています。
どのくらい売れているかというと、この影響でビジネス書ジャンルが(そもそもこの本がビジネス書かとツッコミが入りそうですが、それは置いておいて)前年比超えていると言っても過言ではないくらい。まずはこの発売からの売上推移グラフから見ていきましょう。(日販オープンネットワークWIN調べ)
大ブレイクのきっかけになったのは6月2日放映のTBSテレビ「王様のブランチ」でした。そこから快進撃が続いています。この本の特徴は「完全な土日型」ということでしょう。「ざんねんないきもの事典」のような家族揃って読むタイプの本は比較的土日型ですが、一般的に、ビジネス・教養といったジャンルのタイトルはここまで土日に売上が集中することはありません。
理由はいくつか考えられますが、ページ数もあり、重さもそれなりにありますから、通勤読者というより家庭に置いておいてめくる本という需要だということ。ファミリー層の土日来店が多い郊外型店舗にまで商品が揃っているということが大きな要素でしょう。
この傾向は読者層にどのような影響を与えているのか、続いて読者クラスタを見ていきましょう。
男女比はほぼ半々。元々この調査母体の読者層が女性に寄っていることを考えると男性率が高めと見ていいのではないでしょうか。50代に続いて多いのが20代読者というのも面白いところです、会社で言うと管理職クラス・新人クラスそれぞれの社会人に支持されているようです。1ページという手軽さは年配層にも受けているようです。
続いて併読本を見ていきます。『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』の読者が過去1年に購入した本ベスト10は下記の通り。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『漫画君たちはどう生きるか』 | 吉野源三郎 | マガジンハウス |
2 | 『医者が教える食事術最強の教科書』 | 牧田善二 | ダイヤモンド社 |
3 | 『日本史の内幕』 | 磯田道史 | 中央公論新社 |
4 | 『極上の孤独』 | 下重暁子 | 幻冬舎 |
5 | 『羊と鋼の森』 | 宮下奈都 | 文藝春秋 |
6 | 『日の名残り』 | カズオ・イシグロ | 早川書房 |
7 | 『大人の語彙力ノート』 | 齋藤孝 | SBクリエイティブ |
8 | 『未来の年表』 | 河合雅司 | 講談社 |
9 | 『未来の年表 [2] 』 | 河合雅司 | 講談社 |
10 | 『君たちはどう生きるか』 | 吉野源三郎 | マガジンハウス |
ここまで売れていると、ジャンルは様々、ここ直近のベストセラー一覧のようなラインナップになります。とはいえ、教育や教養、子育て中の方が気になるテーマの本が多め。11位には『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』も入ってきています。『君たちはどう生きるか』に続く生き方を考える一冊になっていきそうですね。
それでは併読書の中から気になる本を紹介していきます。
新書のベストセラーランキングを駆け上がってきているのがこちら。サンデー毎日での連載をまとめたものになります。歴史上の人物について取材する中で、得られた証言や史料を元に史実に残る謎について考えています。『応仁の乱』や『日本史の内幕』といった改めて歴史を振り返る本はまだまだ人気のようです。
夏になると戦争関連本の出版が増えますが、今年の夏は記憶に残る本が多く出版されたように思います。終戦に注目されがちだったこれまでの風潮を吹き飛ばすような企画『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』も今後ずっと読み継がれてほしい作品でした。
『暮しの手帖』の70周年企画がこの『戦中・戦後の暮らしの記録』です。戦時中、戦後の混乱期を生き抜いた市井の人々の手記は、同じように市井に暮らす我々に強い呼びかけをしてくるはずです。
著者ピョートル・フェリクス・グジバチ氏は7月にも『人生が変わるメンタルタフネスーーグーグル流「超集中」で常識を超えるパフォーマンスを生み出す方法』を出版しています、いずれも重要なのはGoogle流。Googleが2012年から進めてきた「プロジェクト・アリストテレス」という生産性向上プログラムで導き出された結果が惜しみなく披露されていますので、マネジャーや会社の組織作りに悩む方必携の1冊でしょう。
雑誌「PRESIDENT」でもしばしば教養というキーワードは取り上げられています。それくらいビジネスパーソンにとって教養は大事。そもそも教養とは何なのか、という事を考える本も多くありますが、エッセンスが凝縮したこちらは発売から間もないこともあり、併読本として注目してみては。
知識をつけると同時に必要になるのが、話し方やマナー。併読本の中には話し方や語学、特に英語の関連本も目立ちました。「ラジオ英会話」などの英会話テキストとの併読も多数。
その中で気になったのがこちらの本。ゴールドマンサックスで教わったという、丁寧語、NG実例が紹介されています。これも教養。
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さて、『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』に話を戻します。この本の内容はタイトルそのまま、1ページに教養の元となるテーマや人の解説がされているというものです。
ジャンルごとに曜日が決まっていて、月曜は「歴史」、火曜は「文学」、水曜は「視覚芸術」、木曜は「科学」、金曜は「音楽」、土曜は「哲学」、日曜は「宗教」と、1週間で7分野を1周できるようになっており、バランスよく知識を身につけることができます。知っておきたい基本的な知識はもちろんなのですが、豆知識は「へー」という内容が多く、ファンが多い項目だとか。
ここまでまだテレビでの取り上げが少ないので、これからまだまだ露出が期待されています。世の中に浸透しきる前にこの知識をゲットしようと思ったらチャンスは今! 興味を持った項目をもっと勉強したい!と思ったらHONZの紹介本にどうぞ。