本書は、Netflixオリジナル作品として大人気の「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の原作となった、作家パイパー・カーマンによる回顧録、『Orange Is the New Black: My Year in a Women’s Prison』の邦訳版である。
上流家庭に生まれ育ったパイパーは、有名大学卒業後、当てもなくさ迷った先で出会う女性と恋に落ち、巧みに悪事に引き込まれ、やむにやまれず麻薬取引に手を染める。その恋人の元を逃げるようにして離れ、過去を清算し(少なくとも本人はそうできたと思っていた)、やっとのことで自分を取り戻したカーマンは、新しい人生を歩み始める。そしてその過程で出会った本当に愛する人と幸せをつかみかけた矢先、過去のたった一度の過ちが原因で刑務所に収監されることとなる。
葛藤し、もがき苦しみながらも、持ち前の精神力の強さと知性で厳しい環境下で生き延びる道を模索し、巧みにサバイバルすることで一年を超える刑期を勤め上げた。出所後は、その厳しい生活の中で感じた女性受刑者への待遇の劣悪さをアメリカ社会に広く訴える活動に精力を注いでいる。
私事ではあるが、本書の翻訳作業中に病気が発覚し、作業の中断を余儀なくされた。最後まで作業を続けたいという気持ちは大きかったが、体調がそれを許さなかった。共訳書という形での出版を目指し、翻訳家安達眞弓氏に協力を仰ぐこととなった。
安達さんは、多忙にもかかわらず、私からの突然の願いを聞き入れ、快く作業を引き継いで下さり、すぐさま作業に取りかかってくれた。そしてこのたび、無事出版にこぎ着けることとなった。彼女の協力がなければ、この素晴らしい一冊が世に出ることはなかっただろう。また、アクシデントに次ぐアクシデントに見舞われた本書の編集過程において、常に落ちつき、迅速に対応して下さった駒草出版の内山さんにも心から感謝している。
本書で描かれるパイパーの不撓不屈の日々を、私自身も経験することとなった。彼女の決して諦めない姿勢にどれだけ励まされたかわからない。パイパーの力強い歩みが、入退院を繰り返す日々を送る私を支えてくれた。出所の日、パイパーが感じた心からの喜びを、私自身、退院の日に追体験することができたのは、訳者冥利に尽きるといったところだろうか。
この感動の物語が、多くの読者の皆様の元に届くことを願ってやまない。
村井理子