とにかくこの本の存在をはやく多くの人に知ってほしい!その想いと勢いだけでこのレビューを書いている。こんなに読んでいてワクワクする経営者の本を読んだのはスティーブ・ジョブズの自伝以来はじめてかもしれない。この本を読んだとき、松下幸之助の『道をひらく』を思い浮かべた。この本はそれと同じくらい、後世まで名著として語り継がれるべき本だと思う。とにかく心を揺さぶられる言葉が満載の1冊だったので、その言葉を紹介していきたい。
私は大きな会社を作ろうとか、日本一の販売会社を作ろうとか、そんな夢を抱いたり、目標を持ったりしたことは、一度もないんですよ。毎日毎日、その日しなければならないこと、その日できることを、一生懸命、自分の力の300%を注ぎ込んで走り続けてきた。その日、そのときをただ「今を生きてきた」。それだけだったんです。
そう語るのは、この本の著者の高田明。テレビショッピングでおなじみのジャパネットたかたの創業者である。2016年にジャパネットたかたの社長を退任し、この本が初の自著となる。タイトルにある通り、高田社長の伝え方の極意が、世阿弥の言葉を引用しながら、この本には書かれている。スキルとパッション、そしてミッションという、高田式の伝え方について学ぶだけでも、十分にこの本を読む価値はあると思う。しかし、それ以上に心に響いたのは「今を生きる」ということについての話だ。
今を生きる。過去にとらわれない。未来に翻弄されない。
著者がここは大事なところだから、線を引いてくださいね。と言っているこの言葉に彼の生き方が集約されている。そしてこの本を読むことで、「今を生きる」ということについて大いに考えさせられるだろう。少なくとも私はこの本を読んで「今を生きる」という言葉の認識が大きく変わった。この本にはきっと人の人生を変える大きな力があると私は信じている。
ジャパネットたかたの原点は父親が経営していたカメラ店である。父親のカメラ店の手伝いから始まり、カメラの販売、観光地やホテルで観光に来たお客さんの写真を撮り、プリントして販売するといった事業をしていた。とにかく目の前のことを一生懸命にやっているうちに、課題が見つかり、それを改善していくことで、支店をまかされ、そして年商を増やしていった。
できない理由をさがせばいくらでもあるんですよ。でも私は、できない理由ではなくて、できる理由を探そうと考えました。
私がやってきたことは、なぜ売上がもっと上がらないのか、それを机の上で考えるのではなくて、現場に立ってボトルネックを探し続けてきたことだったんです。そして、今を一生懸命に生きていないと、ボトルネックは見えてこないんですよ。
カメラ、ビデオカメラ、カラオケ、ワープロなどの販売とフィルムの現像、ホテルなどでの写真撮影といった事業から、ラジオショッピング、テレビショッピングと手を広げていく。テレビショッピングでは生放送にこだわった。周りから不可能だと猛反対されたそうだが、できない理由ではなく、できる理由を考えて実行していった。そして時代の流れにのり、さらにカタログ販売、オンラインショッピングと事業を拡大していく。
やらなかった失敗はあっても、一生懸命にやった失敗はない。
失敗というのは一生懸命にやらなかったことだ
目標などを設けず、常に自己を更新していくことで、ジャパネットたかたは成長をしていった。社長を退任するころには、売上高が1500億を超える企業になったのだ。会社を成長させるだけでなく、人として成長をするための秘訣がこの本には書かれていると思う。
それは常に目の前にあるものに一生懸命取り組み、今を生きることこそが大事だということだ。自分は今を生きているか?この本にそう問いかけられた気がする。また、自分は全然まだまだだな。もっと目の前のことに全力で取り組まないとダメだな。と背中を押された気もした。そうして以下の言葉を胸に、今日から生きていこうと思った。
好きなことを一生懸命にやり続けていれば、今を生きていれば、人生は絶対に拓けるようになっているんですよ。そして一生懸命にやったことは決して無駄にはなりません。後になってその努力はいつかどこかでつながってくるんです。
Carpe diem !(いまを摘め)
伝え方の話の中で引用されている世阿弥の風姿花伝・花鏡が納められている1冊。