新聞社やテレビ局はもちろん、広告代理店や印刷会社にいたるまで、すべてのメディアに関わる人が読んでおくべき本である。
それどころか、企業の宣伝部員や官公庁の広報担当者も、最先端を走るアメリカのメディア界で何が起きつつあるかを知っておくことは不可欠であろう。
著者はニューヨーク市立大学で起業ジャーナリズムを教えている教授だ。ニューヨークといえば世界のジャーナリズムの最大集積地。それゆえに本書のタイトルにはジャーナリズムという言葉が使われている。
しかし、内容はもう少し幅広い。たとえば著者は、これからはモバイル機器向けの音のないニュース動画配信なども登場すると予測する。たしかに電車のなかでわざわざイヤホンを使うよりも、テロップの入ったニュース番組のほうが便利だ。
著者はまた、雑誌社や地方新聞社はオンラインメディアを通じての商品販売に向いているという。たしかに、無限ともいえる品目の商品を提供するアマゾンなどにくらべ、趣味や地域などで限定した品ぞろえは、上質なセレクトショップのような雰囲気を醸し出すだろう。
もちろん、本書のテーマはジャーナリズムだから、その未来に対する考察も十分にしてあまりある。これまでの5W1H型の記事だけでなく、ニュースを補強するためのデータだけの記事、ニュースに関する基本的な事項だけを解説した記事などがでてくると述べる。
それゆえに確かなのは、ニュースは分野や地域を絞り込んだ多数のニュース配信会社で構成されるシステムになるということ。メディア業界は大小の会社が入り乱れ、混沌(こんとん)とした状況になるだろう。
ともあれ出版界の一員としては、本書が紙で出版されたことに感謝したい。
※産経新聞書評倶楽部から転載