4月は「新入社員に贈る本」「新入社員が読んでおくべき本」といったテーマの本が非常に多く店頭に並ぶ時期です。ビジネスHow to本であったり、人間関係の本であったり、様々な本が新入社員向けにお薦めされていますが、実態はどうなのでしょう?今回は本から見えてくる新入社員世代の姿に迫ってみようと思います。
このコーナーで利用している日販のWIN+データは、HonyaClubというポイントカードユーザーの年代別データを利用して作られています。この会員クラスタがこちら
人口比と会員の構成比を比較したデータになっていますが、人口に比べると実は20代というのは本屋さんに非常に良く通っている世代なのです。(ポイントカードという特性もあり全体的に女性が多く、高齢層は少ないという特徴があります)年齢別を見ても、25歳前後は高い構成を示しています。特に男性を見ると全世代中最も会員数が多い世代が20代でした。
さて、そんな新入社員世代はどんな本を読んでいるのでしょう? 4月1ヶ月の22~24歳の売上ランキング上位銘柄を見てみましょう。
RANK | 書名 | 出版社 | 著者名 |
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1 | 『ONE PIECE(81巻)』 | 集英社 | 尾田 栄一郎 |
2 | 『進撃の巨人(19巻)』 | 講談社 | 諫山 創 |
3 | 『暗殺教室(19巻)』 | 集英社 | 松井 優征 |
4 | 『ヲタクには恋は難しい(2巻)』 | 一迅社 | ふじた |
5 | 『僕のヒーローアカデミア(8巻)』 | 集英社 | 堀越 耕平 |
6 | 『マギ(29巻)』 | 小学館 | 大高 忍 |
7 | 『名探偵コナン(89巻)』 | 小学館 | 青山 剛昌 |
8 | 『夏目友人帳(20巻)』 | 白泉社 | 緑川 ゆき |
9 | 『7つの大罪(20巻)』 | 講談社 | 鈴木 央 |
10 | 『テラフォーマーズ(17巻)』 | 集英社 | 橘 賢一 |
別にコミックランキングを抽出したわけではないのですが、見事に上位はコミック一色。この下に雑誌、『少年ジャンプ』が出てきます。
・・・・これで諦めるわけにはいかないので、今度はビジネスジャンルに絞ってランキングを見てみました。
RANK | 書名 | 出版社 | 著訳者名 |
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1 | 『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』 | KADOKAWA | 井堀 利宏 |
2 | 『嫌われる勇気』 | ダイヤモンド社 | 岸見 一郎 |
3 | 『幸せになる勇気』 | ダイヤモンド社 | 岸見 一郎 |
4 | 『超一流の雑談力』 | 文響社 | 安田 正 |
5 | 『入社1年目の教科書』 | ダイヤモンド社 | 岩瀬 大輔 |
6 | 『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』 | 青春出版社 | 藤由 達藏 |
7 | 『伝え方が9割』 | ダイヤモンド社 | 佐々木 圭一 |
8 | 『自分を変える習慣力』 | クロスメディア・パブリッシング | 三浦 将 |
9 | 『生き方』 | サンマーク | 稲盛 和夫 |
10 | 『一瞬でYESを引き出す心理戦略』 | ダイヤモンド社 | DaiGo |
10 | 『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 | 東洋経済新報社 | 魚住 りえ |
10 | 『役員になれる人の「日経新聞」の読み方の流儀』 | 明日香出版社 | 田中 慎一 |
2~4位は全世代に渡って売れているベストセラーがランクイン。最近の新入社員向け書籍の定番は5位にランキングされました。それらを抑えて1位になったのが、『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』でした。
この本は、大学入学直後の世代と、23歳、そして50代に良く読まれているという興味深い傾向を示しています。入社時だけでなく、経営に携わる年代になった時にもう一度この知識が必要になるということでしょうか?色々考えさせられるデータです。
ビジネスそのもののスキルを上げる以前に、対人スキル関連の書籍が多く買われ、読まれている事が良くわかります。この世代がそのまま就職活動中世代であるということも1つの要因になっているのでしょう。
書店に定期的に足を運び、コミックを定期的に読み、自己啓発書籍を購入する。書店にとってはすでにとても大事な読者層ですが、社会に出るというきっかけを使って、もっと多くの本とも触れあっていただきたい。そんな想いを込めて20代に読まれている注目本を紹介していきたいと思います。
18歳、と書いてありますが、この本は政治に参加する意味について考えるための大事なヒントに溢れた1冊です。若い世代が政治に目を向けたことで、浮かび上がる問題も変わってきています。選挙があるかないかは別として、今の政治について、自分の持っている一票の意味についてじっくり考えることが出来るはず。
大ベストセラー『新装版 人を動かす』の文庫版。単行本も引き続き読まれていますが、座右の著として読み続ける方が多い本なので、”これを機に買い直す“、”持ち歩く版として新たに買う” という方も多くいらっしゃるようです。
最近、メディアにも取り上げられはじめて話題になってきた1冊です。日本語で言うと、たとえば「積ん読」。これを英語に翻訳してと言われても、対応する言葉がありません。こういった言葉を世界中から集め、他の国の言葉だとうまく伝わらない言葉のニュアンスを愉しむという作品です。誰かにプレゼントしても喜ばれそう!今じわじわと売れてきています。
先述した『人を動かす』もそうですが、社会に出る時というのは古典に触れる大きなチャンスです。Eテレの「100分de名著」で取り上げられて話題になって以降、ずっとじわじわと売れ続けており、今のその勢いは衰えていません。「愛」というものの本質を分析した哲学思想の名著は、そもそも生きるということ、人生のありかたなど多くのことを考えさせてくれます。
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社会人になったことで、生活環境も、生活のペースも、ガラっと変化した方が多いと思います。しかし、これからも「定期的に本屋さんに通う」という習慣を絶やすことなく、様々な本との出会いを続けて欲しい。そう切に願っています。